目次
【答案構成】
第1 小問(1)について
1 問題提起
2(1) 規範定立(論点:設立中の会社の意義(同一性説))
(2) 規範定立(論点:設立中の会社における発起人の権限の範囲)
3 当てはめ
4 小問(1) 結論
第2 小問(2)について
1 問題提起(定款に記載のない財産引受けを会社側から追認できるか)
2 規範定立(論点:財産引受けの会社側からの無効主張)
3 当てはめ+結論
【参考答案】
第1 小問(1)について
1 Aが発起人代表としてXとの間で締結した売買契約(以下、本件売買契約という)は、Y社成立後、マンションを譲り受けることを目的とするものであり、財産引受け(会社法(以下、法令名省略)28条2号)に該当する。そして、財産引受契約は、変態設立事項として原始定款にその価額等を記載しなければ効力を生じない(28条柱書)ところ、本件売買契約は定款に記載されていない。
そこで、Yは本件売買契約の効力が自身に帰属していないとして、本件売買契約に基づく代金5億円の支払いを拒むことができるか。
2(1) この点、設立登記前にも「設立中の会社」という会社成立を目的とする権利能力なき社団が成立しており、発起人はその執行機関となる。そして、発起人が「設立中の会社」の機関としてその権限の範囲内で行った行為の効果は、実質的には「設立中の会社」に帰属する。そして、「設立中の会社」と「成立後の会社」は同一の存在であるから、「設立中の会社」に実質的に帰属していた権利義務関係は、設立登記により形式的にも成立後の会社に帰属することになる。
そこで、発起人の権限の範囲が問題となる。
(2) 設立中の会社は、会社設立を目的とすることから、設立に法律上、事実上及び経済上必要な行為につき権利能力を有すると解され、その機関たる発起人の権限の範囲も設立に法律上、事実上及び経済上必要な行為について及ぶと解する。
ただし、会社成立時の財産的基礎の保護と取引相手たる債務者保護の観点の調和から、変態設立事項に該当する行為については、定款に記載又は記録することで、成立後の会社に効果帰属する。
3 本件では、上記の通り、本件売買契約は変態設立事項たる財産引受けに該当し、Yの原始定款に本件売買契約は記載されていない。
そうすると、「効力を生じない」以上、無効と解すべきであって、本件売買契約も無効となる。
4 よって、Yは、本件売買契約の無効を理由として、Xからの本件売買契約に基づく代金支払請求権としての代金5億円の支払請求を拒むことができる。
第2 小問(2)について
1 第1における検討のとおり本件売買契約は無効であるが、Yが本件売買契約を追認(民法116条本文類推適用)することにより、本件売買契約に基づくマンションの明渡請求権を主張することができるか。
2 28条2号の趣旨は、株主・債権者等の会社利害関係人を保護する点にあり、財産引受は、定款への記載等を要件として例外的に発起人の権限として認められるものであることから、定款に記載のない財産引受けは絶対的無効であって、会社の側から追認することは認められないと解する*1。
3 本件では、定款に記載のない財産引受けであることは明らかであるから、Yが本件売買契約を追認することはできず、その結果として、本件売買契約に基づくマンションの明渡請求権も認められない。
以上
*1:財産引受の無効主張が信義則に反する特段の事情により認められない場合があるが、本問では特段の事情は不存在であるとして規範には記載していない。特段の事情の類型につき、伊藤雄司「判批」神作裕之=藤田友敬=加藤貴仁編『会社法判例百選〈第4版〉』14頁,15頁(有斐閣、2021)参照。

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