スポンサーリンク

参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題6 払込みの仮装

目次

【答案構成】

第1 小問(1) Y₁の払込みについて

 1 問題提起

 2 規範定立(預合いの定義の提示とその効力(無効説))

 3 当てはめ・結論(Y₁の払込みが預合いに該当するか)

第2 小問(1) Y₂の払込みについて

 1 問題提起

 2 規範定立(見せ金の定義の提示と見せ金該当性の判断基準・効力)

 3(1) 当てはめ(見せ金の外形該当性)

(2) 当てはめ(実質的判断)

(3) 結論

第3 小問(2)について

 1 預合罪の構成要件該当性について

 2 公正証書原本不実記載罪の構成要件該当性について

 

 

【参考答案】

第1 小問(1) Y₁の払込みについて

 1 Y₁の払込みが、いわゆる預合いに該当し、無効とならないか問題となる。

 2 預合いとは、発起人等が払込取扱機関と通謀して出資に係る金銭の払込みを仮装する行為をいう。
 そして、預合いでは、帳簿上の操作のみが行われ、実際には会社財産が確保されていないこと、会社法も刑罰を科してこれを禁止している(会社法965条)趣旨から、無効となると解する。

 3 本件において、発起人Y₁は、払込取扱機関であるP銀行Q支店の融資担当部長Tと通謀し、5000万円を借入して払込みに充て、Y₁が同借入金を返済するまでは払込金専用口座から引き出さないという返還制限の合意をしていたことから、預合いに該当する。
 よって、Y₁の払込みは無効である。

第2 小問(1) Y₂の払込みについて

 1 Y₂の払込みが、いわゆる見せ金に該当し、無効とならないか問題となる。

 2 見せ金とは、発起人が第三者から金銭を借り入れて払込みを行った後、成立後の会社代表取締役に就任して直ちに払込金を引き出し、当該借入金の弁済に充てる行為をいう。
 ただし、見せ金における個別の行為自体は借入行為・払込行為・払戻行為として、適法であるから、見せ金に該当するか否かは、①会社成立後から借入金を返済するまでの期間の長短、②払込金が会社資金として運用された事実の有無、③借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等の総合的に考慮して、当該払込みが実質的には会社資金の確保がなされず、単に払込みの外形を仮装したにすぎない場合に見せ金として無効となると解する。

 3(1) 本件では、Y₂がR銀行S支店から5000万円を借り入れ、株式5000株の払込みに充てている。その後、代表取締役に就任したY₁が払込金1億円を引き出し、Y₂の依頼により、R銀行に対するY₂の借入金支払いを代位弁済していることから、これら一連の行為にY₁・Y₂間において合意が取り交わされていたとすれば、見せ金に該当する可能性が高いといえる。

(2) そこで実質をみると、払込み後1週間という短期間にY₁がZ社を代表してY₂借入金を代位返済している(要件①)。また、借入金の返済額は5000万円であり、Z社資本金の5割を占める割合であるから、会社資金が半分失われることとなりその影響は大きい(要件③)。
 しかし、5000万円の支払いは、Y₂に対する設立費用たる賃料債務の弁済として支払われたと帳簿上処理され、Z社はY₂に対する求償債権を放棄する旨を合意している。これにより、実質的にはY₂に対する求償債権と設立費用債務とで相殺したといえる。これは実質的にデット・エクイティ・スワップと同様の効果をもたらすものであり、会社の財産形成に現実に寄与していると評価できる。
 このことから、Y₂の払込金5000万円は、設立事務所の賃料として運用されたといえ(要件②)、Y₂の払込みは、会社の財産形成に寄与しており、単に外形を装ったものとはいえない。

(3) 以上より、Y₂の払込みは見せ金には該当せず、有効である。

第3 小問(2)について

 1 会社法965条は、株式の発行に係る払込みを仮装する目的をもって「預合い」を行った者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処する旨を定める。
 第1のとおり、Y₁の行為は「預合い」に該当するから、預合罪(965条)の罪責を負う。

 2 また、第1-2の通り、預合いによる払込みは無効であると解することから、Z社の資本金1億円は現実には払い込まれていないことになる。にもかかわらず、Y₁は代表取締役として、「公務員」たる登記官に対し、資本金の払込みが完了した旨の「虚偽の申立て」を行い、「公正証書」である商業登記簿にその旨を「記載させた」ことになる。
 上記の事実は、公正証書原本不実記載罪の構成要件該当行為(刑法157条1項)に当たり、同罪が成立する。

以上

 

コメント