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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅲ部 本案上の主張 第5問 行政処分の取消しと撤回

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 問題提起(取消しと撤回の法律上の用法と講学上の分類のズレについて)

2 規範定立(取消しと撤回の定義)

3 当てはめ(本件処分=後発的事由による効力を将来に向かって失わせる処分=講学上の撤回に該当)

第2 設問2について

1 問題提起(本件処分が行政手続法上の不利益処分に該当し、同法第3章が適用されることの確認)

2 規範定立(不利益処分のうち、どの手続が要求されるかの特定。「許認可等を取り消す不利益処分」に行手法13条1項1号イが適用されることの指摘)

3 結論(「聴聞」手続が執られるべきである)

第3 設問3について

1 Xの主張(本件処分は風営法26条1項の処分要件を欠き違法であること)

2 規範定立(風営法の法解釈)

  ・風営法26条1項が第1要件と第2要件という2つの独立した要件を定めていることの指摘。

  ・公安委員会の解釈(第1要件を充足すれば原則第2要件も充足される)への批判。

  ・立法者意思を根拠に、両要件は別個独立に判断されるべきとの自説の提示。

3 当てはめ(第2要件の充足性検討)

4 結論(第2要件不充足により、本件処分は違法)

第4 設問4について

1 A県の反論(Xの主張に対する反論の提示)

 2(1) 規範定立(違反行為の性質によっては、第1要件を充足すること自体が、特段の事情がない限り第2要件をも充足する場合がありうるとの解釈の提示)

  (2) 規範定立(風営法の目的を根拠に、名義貸し行為は類型的に第2要件を充足する蓋然性が高い行為であり、特段の事情がない限り第2要件も充足するとの論証)

3 当てはめ・結論(特段の事情の不存在により、第2要件を充足し、本件処分は適法)

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 本件処分(風営法26条1項)は、講学上の取消しと撤回のいずれに当たるか。風営法26条1項では「取り消す」との文言が使用されているものの、法律上の用語と、講学上の分類は必ずしも一致しないことから問題となる。

2 この点、取消しは処分成立時に存在していた瑕疵を原因として、その効力を遡及的に失わせる処分をいい、撤回は成立時では適法であった処分を後発的事由によって、その効力を維持することが不適当になった場合に、その効力を将来に向かって失わせる処分をいう。

3 本件処分は、営業許可を適法に得たXが、風営法11条違反となる名板貸しを行ったことを理由になされている。すなわち、名板貸しという後発的事由により、営業許可を取消す処分であるから、講学上の撤回に該当する。

第2 設問2について

1 本件処分(風営法26条1項)は、Xの営業許可を取消すものであり、営業できるという地位を奪う不利益処分(行政手続法(以下、「行手法」という)2条4号柱書本文)に当たる。そして、行手法の適用除外にはならないことから、第3章の不利益処分に関する手続が適用されることになる。

2 本件処分は、営業許可の取消しであり、「許認可等を取り消す不利益処分」(行手法13条1項1号イ)に該当する。

3 したがって、Xに対して執られた手続きは聴聞(行手法13条1項1号)である。

第3 設問3について

1 Xは、本件処分が風営法26条1項の処分要件を欠き違法であると主張することが考えられる。

2 風営法26条1項は、処分要件として「法令……に違反した場合」(以下「第1要件」という)に加え、「著しく善良の風俗……を害し……おそれがあると認めるとき」(以下「第2要件」という)という、2つの要件を定めている。
 本件処分の理由として公安委員会は「名板貸し行為があれば、特段の事情が認められない限り、原則として同条項の『著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある』といえる」との解釈を示している。しかし、第1要件が充足されれば、原則として第2要件も充足されるとする上記解釈は、同条項の文言及び趣旨に反するものであり、誤っている。
 なぜなら、立法者が敢えて第2要件を独立して規定していることからすれば、両者は別個独立の要件と解すべきであるところ、公安委員会の解釈によれば、第2要件は無用の規定となるから、立法者意思に反する。
 したがって、両要件は別個独立の要件として、第2要件の充足性は第1要件とは別に、具体的な事実関係に照らして判断されなければならない。

3 上記解釈を前提に本件を検討すると、第2要件は充足されない。その理由は以下の通りである。
 名義貸し行為自体は、例えば、第2要件を明らかに充足する年少者を客として立ち入らせる行為や年少者に客の接待をさせる行為等と比較して、直ちに「著しく善良の風俗……を害し……おそれがある」とまで評価される行為とはいえない。
 加えて、本件では名義貸し以外にXおよびBが違法・不正な行為は行われていない。

4 よって、本件処分は第2要件を充足せず、違法である。

第4 設問4について

1 上記Xの主張に対し、A県は、以下のように反論することが考えられる。

 2(1) 風営法26条1項の第1要件にいう「法令」には、様々なものが含まれうる。したがって、違反行為の態様・性質は多種多様であるから、第1要件を充足する全ての行為が、直ちに第2要件を充足するわけではない。しかし、違反行為の性質によっては、当該違反行為を行うこと自体が、特段の事情がない限り、第2要件をも充足する場合もありうると解される。そして、いかなる場合に上記のように解されるべきかは、法の趣旨に照らして判断すべきである。

  (2) 風営法は、許可制度を通じて風俗営業を社会的に管理し、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」(風営法1条)ことを目的としている。この目的を達成するための具体的手段として、風営法の各規定は存在している。そのため、風営法の各規定に違反する行為は、法の目的を阻害することに直結し、その結果として第26条1項第2要件にいう「善良の風俗……を害し……おそれ」を生じさせる蓋然性が類型的に高い関係にあるといえる。
 そして、風営法11条が名義貸し行為を禁止するのは、無許可営業を助長し、許可制度の根幹を揺るがす行為であり、風営法の立法趣旨を著しく阻害するものであるためである。
 したがって、名義貸し行為は、風営法の趣旨を害さない特段の事情がない限り、第2要件である「著しく善良の風俗……を害し……おそれがある」をも充足すると解するのが合理的である。

3 本件では、Xに特段の事情といえる事実は認められない。
 よって、本件処分は第1要件、第2要件をともに充足し、適法である。

以上

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