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参考答案 基礎演習行政法〔第2版〕第Ⅰ部 法的手段の選択 第4問 処分の取消訴訟と裁決の取消訴訟

目次

【答案構成】

第1 設問1について

1 問題提起(原処分主義との関係で、処分の取消訴訟と本件裁決の取消訴訟のいずれを提起すべきか。)

2 当てはめ前段:本件に原処分主義の適用があるか(本件処分の取消訴訟と、本件裁決の取消訴訟とを提起することができる→行訴法10条2項の適用〇→本件裁決の取消訴訟において本件処分の違法を主張できない)
 当てはめ後段(本件処分の違法性を主張するためには、裁決の取消訴訟は不適)

3 結論

第2 設問2について

1 問題提起(審査請求の中で不当性の有無が審査されなかったことは、「処分の違法を理由として取消しを求めること」に当たるか)

2 規範定立(裁決固有の瑕疵)

3 当てはめ(審査請求において不当性の審査がされなかったことは、審査請求手続における瑕疵=裁決固有の違法に該当)

4 結論

第3 設問3について

1 結論の提示

2 規範定立(取消訴訟の審理対象に処分の不当が含まれるか。)

3 当てはめ(Xの主張は処分の不当に関するもの)・結論

 

【参考答案】

第1 設問1について

1 Xは、本件処分の取消訴訟か、本件裁決の取消訴訟のいずれを提起すべきか。原処分主義(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)10条2項)の適用が問題となる。

2 本件処分は行政庁の公権力の行使として処分性が認められ(行訴法3条2項)、また本件裁決も審査請求に対する判断として処分性が認められる(行訴法3条3項)ため、いずれも取消訴訟の対象となる。そのため、本件では本件処分の取消訴訟と、本件処分についての審査請求を棄却した本件裁決の取消訴訟とを提起することができる。したがって、行訴法10条2項の適用があり、Xは本件裁決の取消訴訟において本件処分の違法を主張することは許されない。
 そこで、Xが争おうとしているのは本件処分の違法性であるから、本件裁決の取消訴訟はXの主張との関係で適さない。

3 よって、Xは、本件処分の取消訴訟を提起し、その中で本件処分の違法性を主張しなければならない。

第2 設問2について

1 Xが、審査請求の中で不当性の有無が審査されなかったことを理由に、本件裁決の取消訴訟を提起することは適切か。原処分主義との関係で「処分の違法を理由として取消しを求めること」に当たるかが問題となる。

2 原処分主義(行訴法10条2項)が適用される場合、裁決の取消訴訟においては、「処分の違法を理由として取消しを求めること」すなわち、処分の違法を理由とすることはできない。しかし、裁決固有の瑕疵については、裁決の取消訴訟において主張することが許されると解される。
 裁決固有の瑕疵とは、主として、裁決における手続上の違法や、内容が法の定める方式に違反する場合などを指す。

3 本件では、審査請求において不当性の有無が審査されなかったとされている。行政不服審査法は、処分が「違法又は不当」である場合に不服申立てができると規定し(行政不服審査法1条)、審査庁は原則として違法性の観点のみならず不当性の観点からも審査を行うべきである。
 したがって、本件で不当性の審査がされなかったことは、審査請求の手続における瑕疵であり、裁決固有の違法に該当する。

4 よって、Xは、この裁決固有の瑕疵を理由として、本件裁決の取消訴訟を提起することは適切である。

第3 設問3について

1 Xが本件処分の不当性のみを争おうとする場合、本件処分の取消訴訟または本件裁決の取消訴訟を提起することは適切でない。

2 取消訴訟は、裁判所が処分の適法性を統制するための制度である。裁判所は法の解釈・適用について判断する機関であり、行政庁に認められた裁量権の範囲内で行われた当不当の判断に介入することは、原則として権力分立の趣旨に反する。
 したがって、取消訴訟において審理の対象となるのは、処分が違法であるか否かに限り、不当であるか否かは審理の対象とならない。

3 本件において、Xは本件処分の不当性のみを争おうとしているが、このような主張は、取消訴訟の審理の対象外である。
 したがって、Xが本件処分の不当性のみを争うために、本件処分の取消訴訟または本件裁決の取消訴訟を提起することは適切ではない。

以上

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