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参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題19 新株発行の無効事由

目次

【答案構成】

 1 問題提起(新株発行無効の訴えの要件を充足するか。)

2(1) 規範(新株発行無効の訴えの要件:(ⅰ)株主等(828条2項2号)、(ⅱ)発行の効力発生日から6箇月以内であること(828条1項2号)、(ⅲ)無効事由の存在)

(2) 規範定立(新株発行の無効事由)

3(1) 当てはめ1(要件(ⅰ)・(ⅱ))

 (2)ア 当てはめ2-1(問題提起:①新株発行に関する事項の通知・公告の欠缺は無効事由となるか。)

イ 規範定立(株主への通知・公告の欠缺は、新株発行の効力に影響を及ぼすような重大な法令・定款違反となるか。)

ウ 小結論(①は無効事由となる)

 (3)ア 当てはめ2-2(問題提起:②取締役会決議の瑕疵、③不公正発行は無効事由となるか。) 

イ 規範定立(会社の内部的手続の瑕疵や、発行目的の不当性は、新株発行の効力に影響を及ぼすような重大な法令・定款違反となるか。)

ウ 小結論(②、③は無効事由とならない)

 (4)ア 当てはめ2-3(問題提起:④払込みの仮装は無効事由となるか。)

イ 規範定立(払込みの仮装は、新株発行の効力に影響を及ぼすような重大な法令・定款違反となるか。)

ウ 小結論(④払込みの仮装は無効事由とならない)

 4 結論

 

【参考答案】

 1 XのYに対する本件新株発行無効の訴え(会社法(以下法令名省略)828条1項2号)は、認められるか。その要件充足性が問題となる。

2(1) 新株発行無効の訴えの要件は、(ⅰ)株主等(828条2項2号)、(ⅱ)発行の効力発生日から6箇月以内であること(828条1項2号)、(ⅲ)無効事由の存在である。

(2) 要件(ⅲ)無効事由につき、明文の規定はないものの、取引の安全と法的安定性を保護する観点から、その無効事由は、新株発行の効力に影響を及ぼすような重大な法令・定款違反に限られると解する。

3(1) 本件において、XはY社株主であるから要件(ⅰ)を、Y社は公開会社であり、本件新株発行の効力発生日である2024年5月から6か月以内である同年9月に本件訴えを提起していることから、要件(ⅱ)をそれぞれ満たす。

 (2)ア ①新株発行に関する事項の通知・公告の欠缺は、新株発行の無効事由となるか。

イ 株主への通知・公告(201条3項、4項)は、株主に新株発行差止請求権(210条)の行使機会を保障する点にその趣旨がある。そのため、差止請求権行使の機会を奪う通知・公告の欠缺は、株主が差止請求をしても差止事由がないためにこれが許容されないと認められる特段の事情がない限り、無効原因となる。

ウ Y社は株主Xに対して通知・公告(201条3項、4項)を行っていない。そして、本件新株発行は、③代表取締役Aが自己の支配権を確立することを主要目的で行われたものであり、「著しく不公正な方法」(210条2号)による新株発行に当たり、差止事由が認められる。そうすると、Xが差止請求をしても許容されないといった「特段の事情」はなく、むしろ差止めが認められるべき事案であったといえる。
 したがって、①は本件新株発行の無効事由となる。

 (3)ア ②取締役会決議の瑕疵、③不公正発行は無効事由となるか。

イ 取引の安全を重視する観点から、会社の内部的手続の瑕疵や、発行目的の不当性は、新株発行の差止事由とはなっても、一度有効に成立した新株発行の効力を覆す無効事由にはあたらないと解する。

ウ ②取締役Bへの招集通知漏れや、③代表取締役Aの支配権維持目的という事実も、これらにあたり、ただちに無効事由となるものではない。

 (4)ア ④払込みの仮装は無効事由となるか。

イ 払込みが仮装された場合であっても、会社法は関与した引受人や取締役に対して金銭支払義務を課す(213条の2、213条の3)ことで、会社の資本的基礎を確保しようとしている。そのため、発行自体を無効とすると、かえって会社の財産を害する可能性がある。

ウ したがって、④払込みの仮装も無効事由とはならない。

 4 以上より、本件新株発行の無効を求める訴えの要件(ⅰ)及び(ⅱ)は満たされており、また、無効事由(要件(ⅲ))として①が存在する。
 よって、XのYに対する本件新株発行無効の訴えは認められる。

以上

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