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参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題20 非公開会社における新株発行の無効事由

目次

【答案構成】

 1 問題提起(本件新株発行無効の訴えは認められるか。)

2(1) 規範(新株発行無効の訴えの要件:(ⅰ)株主等(828条2項2号)、(ⅱ)発行の効力発生日から1年以内であること(828条1項2号括弧書)、(ⅲ)無効事由の存在)

(2) 規範定立(要件(ⅲ):新株発行の無効事由)

3(1) 当てはめ1(要件(ⅰ)・(ⅱ))

 (2)ア 当てはめ2-1(非公開会社における株主総会特別決議を経ずになされた第三者割当による新株発行は、無効事由に当たるか)

イ 当てはめ2-2(上記事実の摘示:Y社は非公開会社であり、本件新株発行は第三者割当にあたる。しかし、Bは株主総会を実際に開催することなく、虚偽の議事録で手続を行った。)

 4 結論

 

【参考答案】

 1 XのYに対する本件新株発行無効の訴え(会社法(以下法令名省略)828条1項2号)は認められるか。

2(1) 新株発行無効の訴えの要件は、(ⅰ)株主等(828条2項2号)、(ⅱ)発行の効力発生日から1年以内であること(828条1項2号括弧書)、(ⅲ)無効事由の存在である。

(2) 要件(ⅲ)無効事由につき、明文の規定はないものの、取引の安全と法的安定性を保護する観点から、その無効事由は、新株発行の効力に影響を及ぼすような重大な法令・定款違反に限られると解する。

3(1) Xは本件新株発行時においてY社の株主であるから、「株主等」(828条2項2号)に当たる(要件(ⅰ)充足)。 また、本件新株発行の効力発生日は2023年7月6日であるところ、Xは2024年3月1日に本件訴えを提起している。非公開会社であるY社における新株発行無効の訴えの提訴期間は効力発生日から1年であるから(828条1項2号括弧書)、期間内に提訴されている(要件(ⅱ)充足)。

 (2)ア 本件で問題となるのは、非公開会社における第三者割当増資の手続である。非公開会社においては、株主の個性が重視され、会社の支配権に直結する持株比率の維持は、既存株主にとって極めて重要な利益である。
 この利益を保護するため、会社法は、株主割当て以外の方法で募集株式を発行する場合には、原則として株主総会の特別決議を要すると規定する(199条2項、309条2項5号)。
 また、提訴期間が非公開会社の場合、1年とされていることを加味すると、会社法は、非公開会社においては取引の安全よりも既存株主の持株比率維持という利益の保護を重視しているといえる。
 したがって、非公開会社において、その最も重要な意思決定機関である株主総会特別決議を経ずに第三者割当による新株発行を行うことは、既存株主の利益を根本から害するものであり、重大な法令違反に当たると解する。

イ 本件において、Y社は非公開会社であり、本件新株発行は株主X以外の第三者であるBに対するものであるから、その実行には株主総会の特別決議が必要であった。
 にもかかわらず、Bは株主総会を実際に開催することなく、虚偽の議事録を用いて手続を進めているから、本件新株発行は株主総会の特別決議を欠いたまま行われたものである。
 したがって、本件新株発行には重大な法令違反が存在し、無効事由が認められる。

 4 よって、本件新株発行無効の訴えの要件を充足することから、Xの請求は認められる。

以上

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