目次
【答案構成】
第1 小問(1)について
1 設問に対する応答(Xの主張すべき瑕疵:取締役ではないCを含んだ取締役会の決定に基づき、代表取締役ではないAが本件総会を招集したこと。Xの提起すべき訴え:株主総会決議不存在確認の訴え)
問題提起(株主総会決議の不存在事由につき明文規定がないことから、いかなる場合に株主総会決議が不存在と評価されるか)
2 規範定立(株主総会決議不存在確認の訴えにおける不存在事由)
3 当てはめ(2023年2月1日の臨時株主総会及び取締役会は開催された事実がない→Cの取締役就任を否定→本件総会は、Cを加え構成された取締役会決議+代表取締役でないAにより招集→招集手続(298条4項、296条3項)違反認定→本件総会の招集手続には、決議の存在を法的に評価できないほどの重大な瑕疵あり→原則として本件決議は不存在)
4(1) Y社の想定反論(本件決議は全員出席総会=招集手続の瑕疵が継続しない特段の事情あり→本件決議は有効に成立。)
(2) 規範定立(代理出席を含む全員出席総会決議の効力)
(3) 当てはめ(株主10名全員が開催に同意、代理人を含め出席。代理人によって出席した株主は、会議目的を了知のうえ委任状作成+本件決議はその目的範囲内→本件総会における手続上の瑕疵は治癒された)
5 結論
第2 小問(2)について
1 問題の所在
2 決議不存在確認の訴えが棄却される場合
(1) 当てはめ(本件決議は有効に成立→Xの取締役の地位は終了→代表取締役の地位にあることの確認を求める利益喪失)
(2) 小結論
3 決議不存在確認の訴えが認容される場合
(1) 当てはめ(本件決議は不存在→Xはいまだ代表取締役の地位にある→代表取締役の地位にあることの確認を求める利益肯定)
(2) 小結論
【参考答案】
第1 小問(1)について
1 Xは、本件総会でなされた本件決議の効力を争うため、取締役ではないCを含んだ取締役会の決定に基づき、代表取締役ではないAが本件総会を招集したことを理由として、株主総会決議不存在確認の訴え(会社法(以下法令名省略)830条1項)を提起すべきである。
そこで、株主総会決議の不存在事由につき明文規定がないことから、いかなる場合に株主総会決議が不存在と評価されるか問題となる。
2 決議不存在確認の訴えに期間制限(831条1項柱書)設けられていないのは、決議不存在という瑕疵が決議の効力の早期安定の要請を上回るほどに重大だからである。
そこで、「決議が存在しない」場合とは、①決議の物理的不存在のほか、②決議の法的不存在(決議の手続に著しい瑕疵があるために法律上決議が存在したと評価できない場合)と評価できる場合と解すべきである。
3 本件では、2023年2月1日の臨時株主総会及び取締役会は開催された事実がない。そのため、Xの取締役辞任、Cの取締役への就任、及びAの代表取締役への就任といった事実は法律上存在しない。その結果、本件総会が招集された時点でのY社の正当な取締役はX・A・Bの3名であり、代表取締役は依然としてXであった。
にもかかわらず、本件総会は、取締役ではないCを加え構成された取締役会決議に基づき、代表取締役ではないAによって招集されている。これは、会社法が定める招集手続(298条4項、296条3項)に違反し、招集権限のない者によってなされた招集にほかならない。
したがって、本件総会の招集手続には、決議の存在を法的に評価できないほどの重大な瑕疵があるといえ、原則として本件決議は不存在となる。
4(1) これに対し、Y社は、本件決議には株主が全員出席しており、招集手続の瑕疵が継続しない特段の事情があったといえ、本件決議は有効に成立すると反論することが考えられる。
(2) 株主総会の招集に際し、招集権者による招集手続を経ることが必要であるとする趣旨は、全株主に対し、株主総会の開催と会議の目的たる事項を知らせることによって、出席の機会を与えるとともにその議事及び議決に参加するための準備の機会を与えることにある。
そのため、招集手続を欠く場合であっても、全員出席総会であり、代理人が出席している場合には、株主が目的事項を了知したうえで委任状を作成し、決議が目的事項の範囲内の者である場合には、その趣旨が没却されず、招集手続の瑕疵は治癒され、当該決議は有効に成立すると解すべきである。
(3) 本件では、株主10名全員が開催に同意し、代理人を含め出席している。そして、代理人によって出席した株主も、会議の目的である「取締役選任の件」を理解した上で委任状を作成しており、本件決議はその目的の範囲内のものだといえる。
したがって、本件総会は有効な全員出席総会として成立しており、招集権限のないAが招集したという手続上の瑕疵は治癒されたと評価できる。
5 よって、本件決議の不存在事由となる瑕疵は治癒されるから、Xによる株主総会決議不存在確認の訴えは認められない。
第2 小問(2)について
1 Xが提起した代表取締役の地位確認の訴えの帰趨は、小問(1)で検討した決議不存在確認の訴えが認容されるか棄却されるかによって、Y社による訴えの利益が認められないとの本案前の抗弁が認められるか否かが決せられる。
2 決議不存在確認の訴えが棄却される場合
(1) この場合、本件決議は有効に成立し、A・B・CがY社取締役として適法に選任されたことになる。そのため、本件決議成立により、Xの取締役の地位は終了し、代表取締役の地位にあることの確認を求める利益は失われる。
(2) よって、Y社の本案前の抗弁が認められ、Xの地位確認の訴えは不適法なものとして却下される。
3 決議不存在確認の訴えが認容される場合
(1) 本件決議が法的に存在せず、不存在となるため、A・B・Cは取締役に選任されていないことになる。そのため、Xの代表取締役の地位を失わせる事由は存在せず、代表取締役の地位にあることの確認を求める利益が認められる。
(2) よって、Y社の本案前の抗弁には理由がなく、Xの地位確認の訴えは認容される。
以上

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