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【参考答案】
第1 設問(1)について
1 原告Xの申請により尋問することになった証人Aについて、裁判所はウェブ会議による尋問を認めることができるか。被告Yが法廷での尋問を求めているにもかかわらず、Aの業務多忙を理由として同尋問を実施できるか。民事訴訟法(以下法令名省略)204条は、証人尋問におけるウェブ会議の利用要件として、各号該当事由を定めているところ、業務多忙が「証人が受訴裁判所に出頭することが困難であると認める場合」(同条1号)に当たるか、その意義が問題となる。
2 証人尋問においては、裁判官が法廷において証人の表情や仕草を直接観察して心証をとるという直接主義の要請が強い。他方で、証人は当該訴訟とは無関係の第三者であるため、審理への協力を求める観点からは、証人の便宜を図り、過度な負担を軽減する必要性が大きい。
したがって、同号にいう「出頭することが困難であると認める場合」とは、証人の住所、年齢、心身の状態その他の事情に照らし、法廷への出頭が証人に著しい負担を強いると評価できる場合をいうと解する。そして、「業務多忙」であっても、その具体的な内容や程度によっては同要件を満たし得る。
もっとも、同要件を満たす場合であっても、必ずウェブ会議による尋問をしなければならないわけではなく、裁判所は、当該証言の重要性等に鑑み、対面での尋問が必要であると判断した場合には、裁量により法廷での尋問を実施することができると解する。
3 本件において、Aは業務多忙を理由としているところ、その具体的な業務内容や拘束状況に照らし、法廷への出頭が著しい負担となる場合には、「出頭することが困難であると認める場合」に該当し得る。
しかしながら、本件訴訟は貸金返還請求訴訟であり、Aは金銭貸付の場に立ち会っていたとされる証人である。すなわち、Aの証言は、原告Xの請求原因事実の存否を直接左右する事案の核心に関わるものであり、直接主義の要請から、裁判官が法廷でその表情や仕草を直接観察して心証を形成する必要性が極めて高い。加えて、被告Yも法廷での尋問を求めている。
これらのことからすると、裁判所は、Aの業務多忙の程度によっては出頭困難の要件を満たすとしてウェブ会議による尋問を認める余地はある。
もっとも、裁量により、法定での尋問を実施する余地も認められる。
第2 設問(2)について
1 2026年4月10日において、B弁護士は訴状を事件管理システムにアップロードしようとしたが、インターネットが使えなかったためオンライン提出ができない状態にある。時効期間の経過が迫る中、B弁護士はどのような措置をとるべきか。訴訟代理人である弁護士が訴えを提起する場合、原則として電子情報処理組織を使用する方法が義務付けられ、書面による提出は許されていない(132条の11第1項)。 もっとも、「裁判所の使用に係る電子計算機の故障その他その責めに帰することができない事由」によりオンライン提出ができないときは、例外的に書面による提出が認められている(同条第3項)。そこで、「その他その責めに帰することができない事由」に当たるかが問題となる。
2 132条の11第1項が弁護士にオンライン提出を義務付けたことに照らし、同条3項にいう「責めに帰することができない事由」とは、申立人の努力や事前対策によっても回避できない、自己の支配領域外の事由をいうと解する。
したがって、事前対策等により対応可能な申立人側のコンピュータの故障等は含まれず、広範な通信障害等、申立人のコントロールが及ばない事由をいうと解する。
3 本件において、B弁護士がインターネットを使えない原因が、B弁護士の事務所のパーソナルコンピュータの故障等ではなく、プロバイダ側の通信障害等にあるような場合には、B弁護士の管理が及ばない事由によるものであるため、オンライン提出ができないことについて「責めに帰することができない事由」があると認められる。
そこで、B弁護士としては、時効期間の経過が迫っている同月10日中に訴えを提起するため、インターネットの不通がプロバイダ側の問題等の自己の責めに帰すべからざる事由によるものであることを主張・疎明した上で、例外的に書面により訴状を提出する措置をとるべきである。
以上

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