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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題11 将来給付の訴え

目次

 

【参考答案】

第1 設問前段部分について

1 ③請求は、口頭弁論終結時においては未だ履行期が到来していない請求権について、あらかじめ債務名義の取得を求めるものであり、将来給付の訴え(民事訴訟法(以下法令名省略)135条)に当たる。将来給付の訴えは、将来における事情の変動により請求権の存否や内容が変化する可能性があり、債務者に不当な負担を課すおそれがあることから、原則として訴えの利益が認められない。
 もっとも、例外的に「あらかじめその請求をする必要がある場合」(135条)には、訴えの利益が認められることから、いかなる場合に「あらかじめその請求をする必要」が認められるかが問題となる。

2 135条の趣旨は、将来の執行不能のリスクを回避し原告を保護するものである反面、将来の事情変更による請求異議の訴え(民事執行法(以下「執行法」という。)35条)の提訴・立証の負担を被告に転嫁するものである。
 そこで、被告の不当な負担を回避する観点から、継続的不法行為に基づく将来の損害賠償請求については、(ⅰ) 将来の請求権の基礎となるべき事実関係・法律関係が既に存在し、その継続が予測され、(ⅱ) 請求権の成否及び内容につき、債務者に有利な将来の変動事由があらかじめ明確に予測し得る場合であり、(ⅲ) (ⅱ)の変動を請求異議事由として債務者に提訴・立証の負担を課しても格別不当ではないといえる場合には、「あらかじめその請求をする必要がある」として、訴えの利益が認められると解する。

3 まず、Yは病院経営のために2年前から恒常的に室外機を使用しており、今後もその稼働により騒音が発生し続ける蓋然性は高いといえる((ⅰ)充足)。
 しかし、室外機による騒音被害が受忍限度を超え不法行為を構成するか否か、およびその損害額は、今後の稼働状況、Yによる防音措置の有無、経年劣化等の複雑な要因に左右される。したがって、債務者Yに有利な事情の変動をあらかじめ明確に予測しうる事由に限定することは困難である((ⅱ)不充足)。このように不確定要素が多いにもかかわらず、Yに対して、将来事情変更が生じた際に自ら請求異議の訴えを提起し、違法性がなくなったことを立証しなければ強制執行を免れないという負担を課すことは、立証責任の分配の観点からYに過度な負担を強いるものであり、不当である((ⅲ)不充足)。

4 以上より、③請求は「あらかじめその請求をする必要がある場合」には当たらず、訴えの利益を欠くため、不適法として却下されるべきである。

第2 設問後段部分について

1 仮に③請求を認容する判決が確定した場合、Xは当該判決を債務名義として、Yに対し強制執行の申立てを行うことで判決の実現を図ることになる(執行法22条1号)。
 そして、本件損害賠償請求権は、身体的被害に係る継続的給付を目的とするものであるため、Xは、Yの不履行があった場合、履行期が到来していない将来の給付部分についても債権執行の申立てをすることが可能となる(執行法151条の2第1項)。これにより、Xは将来の給付分についても、あらかじめYの財産を差し押さえ、確実に回収を図ることができる。

 2(1) 一方で、Yは、以下のような不利益を受けることになる。

  (2) まず、Yは支払期限が到来していない将来の債務を理由として、直ちに自己の財産に対し差押えを受けるリスクを負うことになる。

  (3) Yが強制執行を阻止するためには、実体法上の請求権の消滅を異議事由として、自ら請求異議の訴え(執行法35条)を提起しなければならない。その際、本来であれば原告であるXが負うべき不法行為の成立要件の存在について、被告であるYが不存在を立証しなければならないこととなる。これは実質的な立証責任の転換を意味し、Yに過度な負担を強いるものとなる。

  (4) また、損害額算定の基礎事情に著しい変更が生じた場合、Yは定期金賠償額の変更の訴え(117条)を提起して減額を求める必要があるが、労力と費用を要することになる。

以上

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