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【参考答案】
第1 設問前段部分について
1 本件訴訟は、独立当事者参加(民事訴訟法(以下法令名省略)47条1項)による三面訴訟であり、判決の矛盾抵触を回避し合一確定する要請が働くため、必要的共同訴訟の規定が準用される(47条4項、40条1項)。したがって、敗訴当事者の一人であるXのみが控訴した場合であっても、上訴不可分の原則により、Xの敗訴部分のみならず、上訴しなかったY、Zに関する請求部分も含めた全請求について判決の確定が遮断され、控訴審に移審する。
そこで、控訴審裁判所がZではなくXが所有権を有するとの心証を得た場合、控訴していないYのために、第1審のZ勝訴判決をZ敗訴判決に変更することは許されるか。不利益変更禁止の原則(304条)との関係で問題となる。
2 不利益変更禁止の原則(304条)は、処分権主義(246条)の控訴審における現れとして、控訴審は不服申立てのない範囲を超えて原判決を変更することは許されない。
もっとも、独立当事者参加訴訟では、三当事者間の論理的に矛盾のない解決を図るため、必要的共同訴訟の規律が準用される(47条4項、40条1~3項)。そのため、合一確定の要請という公益的見地から、当事者の処分権主義は後退することになる。
そこで、合一確定のために必要な限度で、不利益変更禁止の原則の例外として、上訴しなかった敗訴者の敗訴部分を、当該敗訴者に有利に変更することも許容されると解する。
3 控訴審裁判所はXが所有権を有するとの心証を得ているため、XのY及びZに対する請求を認容すべきことになる。この場合、同一物についてXの所有権を肯定する以上、論理必然的にZの所有権は否定されなければならない。
仮に、Yが控訴していないことを理由に、不利益変更禁止の原則を適用してZのYに対する請求を認容した第1審判決を維持すれば、Xが所有者であるという判断と、Zが所有者であるという判断が併存することになる。これは、判決内容に論理的な矛盾を生じさせるだけでなく、Yに対して二重の引渡し義務を課すことになり、不当である。
したがって、このような矛盾を解消し、三当事者間での権利関係を統一的に解決するためには、ZのYに対する請求を棄却へと変更することが、合一確定のために必要な限度といえる。
4 よって、控訴審裁判所は、原判決を取り消し、Xの請求を認容し、Zの請求を棄却する判決をすべきである。
第2 設問後段部分について
1 Yのみが控訴した場合も、第1の場合と同様に、上訴不可分の原則により全請求が移審する。もっとも、裁判所がZではなくXが所有権を有するとの心証を得た場合に、控訴していないXのために、XのYに対する請求を認容判決に変更することができるかが、不利益変更禁止の原則(304条)との関係で問題となる。
そこで、第1-2の基準に基づき、かかる変更が「合一確定のために必要な限度」に含まれるといえるかが問題となる。
2 まず、ZのYに対する請求については、Yの控訴があり、かつ裁判所がZは所有権を有しないとの心証を得ているため、原判決を取り消し、請求を棄却すべきである。
一方、Xは第1審の敗訴判決に対し控訴しておらず、その結果を甘受している。ここで、Zの請求を棄却し、かつXの請求も第1審判決の請求棄却を維持した場合、XもZもYに対する関係では所有権の主張が認められないという結果になる。しかし、所有権確認訴訟においては、真の所有者が第三者である可能性や、単に原告が立証に失敗した場合など、複数の主張者が共に敗訴する事態は論理的にあり得る。
両判決は、実体的真実とは異なるものの、Zとの関係で、二重給付を命じるなどの判決の矛盾抵触を生じさせるものではない。
したがって、自ら権利実現を求めていないXに勝訴判決を与えることは、合一確定のために不可欠とは言えず、必要な限度を超えている。
3 よって、裁判所は、ZのYに対する請求については原判決を取り消して棄却し、XのYに対する請求については、原判決を維持すべきである。
以上

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