目次
【参考答案】
1 処分権主義(民事訴訟法(以下法令名省略)246条)の下、明示的一部請求の場合、訴訟物は明示された一部のみに限定される。そして、民法147条1項1号が規定する「裁判上の請求」による時効の完成猶予の効力は、権利行使の意思が公にされたといえる訴訟物の範囲にのみ生じるのが原則である。
したがって、第1訴訟において明示的に訴求されなかった残部2200万円については、「裁判上の請求」としての時効完成猶予の効力は及ばないとも思われる。
2 もっとも、民法147条1項1号が「裁判上の請求」に時効完成猶予の効力を認めた趣旨は、裁判上の請求により、権利者が権利の上に眠る者でないことを示す権利行使の態度が明確にされた点にある。
そうだとすれば、同条により時効完成猶予の効力が及ぶ範囲は、必ずしも訴訟物たる権利関係の範囲に限定されるものではなく、権利行使の意思が及んでいるといえる範囲にまで拡張されるべきである。そして、明示的一部請求であっても、当該債権の一部と残部とは請求原因事実を基本的に同じくするし、債権者は将来にわたって残部をおよそ請求しないという意思の下で請求を一部にとどめているわけではないのが通常である。
したがって、債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど、残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り、明示的一部請求の訴えの提起により、残部についても「裁判上の請求」があったものとして、時効完成猶予の効力が生じると解すべきである。
3 Xは、第1訴訟において債権の一部であることを明示しており、残部を放棄したといった特段の事情は見当たらない。したがって、第1訴訟の提起は、残部についても「裁判上の請求」としての効力を有する。
4(1) もっとも、本件では訴え提起前に「本件催告」がなされているため、民法150条2項の「再度の催告」の禁止に触れないかが問題となる。
(2) しかし、第1訴訟の残部への効力は「裁判上の請求」であり、単なる「催告」ではない。民法150条2項の趣旨は、効力の弱い催告を繰り返すことによる弊害を防ぐ点にあり、「裁判上の請求」が行われた本件には適用されない。
(3) よって、第1訴訟の提起による時効完成猶与の効力は、第2訴訟にも及び、Xの請求は認められる。
以上

コメント