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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題60 主観的追加的併合

目次

 

【参考答案】

1 Xによる被告にY₂を追加する旨の申立ては適法か。明文規定のない主観的追加的併合の可否が問題となる。

2 この点、判例は、かかる併合を認める明文規定がないこと、新訴につき旧訴の訴訟資料を当然に利用できるか不透明であり必ずしも訴訟経済にかなわないこと、及び訴訟の遅延や濫訴を招くおそれがあることを理由として、これを否定する。そこで、判例によれば、原告は第三者に対して別訴を提起した上で、弁論の併合(152条1項)を待つことになる。
 しかし、弁論の併合は裁判所の裁量に委ねられており、当事者に併合を求める申立権が認められているわけではない。これでは紛争の一回的解決や訴訟経済という要請を十全に満たすことができず、解決策として不十分である。また、訴訟の遅延や複雑化、あるいは新当事者の手続保障という懸念は、個別の事案における要件審査によって排除可能である。
 そこで、①38条前段の要件を満たし、②主張及び証拠の共通性が高く、③当初から共同訴訟としなかったことにつき原告に重大な過失がなく、④従前の訴訟手続を著しく遅延させず、かつ⑤新当事者の手続保障を害しない場合には、紛争の一回的解決の観点から、明文なき主観的追加的併合も許容されると解する。

3 まず、XのY₁に対する損害賠償請求と、追加しようとするY₂に対する請求は、いずれも本件土地の売買価格の算定根拠となった鑑定評価の瑕疵及びその隠蔽という同一の事実上の原因に基づいている。したがって、「訴訟の目的である権利……が……共通の事実上……の原因に基づくとき」(38条前段)に該当し、共同訴訟の要件を満たす(要件①充足)。
 そして、いずれの請求も鑑定評価書の妥当性や保安林指定の有無が主要な争点であり、主張及び証拠の共通性も極めて高い(要件②充足)。
 次に、原告Xの過失についてみるに、XはAの債権者として代位訴訟を提起した立場であり、当初は鑑定評価書の内容を信頼せざるを得なかった。鑑定を行ったY₂の従業員による「不法な瑕疵の隠蔽」という主観的態様は、第一審での証人尋問という証拠調べの過程で初めて明らかになったものである。そうであれば、Xが提訴当初からY₂を被告に加えなかったことについて、重大な過失があったとは認められない(要件③充足)。
 また、新被告となるY₂については、第一審の段階での追加であり、第一審からの審理を受ける機会が保障されており、審級の利益を奪われることはないため、手続保障を害するとはいえない(要件⑤充足)。
 もっとも、本件では既に第一審において証人尋問まで進行しているため、訴訟の著しい遅延を招く場合は否定されるべきである。確かに、本件でY₂を追加すれば、Y₂に対する請求について改めて主張・立証を整理し直す必要が生じ、これまでの審理状況を承継させるにしても、一定の重複や停滞は避けられない。しかし、別訴を提起させて一から審理を行うことに比べれば、同一の手続内で解決を図る方が紛争の一回的解決に資し、全体としての訴訟経済にかなうといえる。本件の追加申立てが、新事実の発覚後速やかになされたものであれば、従前の手続を「著しく」遅延させるとまでは評価すべきではない(要件④充足)。

4 以上より、Xによる被告Y₂の追加は適法なものとして認められる。

以上

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