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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題71 訴訟承継の範囲

目次

 

【参考答案】

第1 Yとの関係における訴訟手続

1 X・Y間訴訟係属中に当事者であるYが死亡している。この場合、Yの有していた訴訟上の地位は、実体法上の権利義務と共にその相続人に包括承継されることになる。

 2(1) 手続上は、Yに訴訟代理人がいない場合、新当事者である相続人の裁判を受ける権利を保障するため、訴訟手続は法律上当然に中断する(民事訴訟法(以下法令名省略)124条1項1号)。この場合、手続を続行するためには、① Yの相続人が自ら受継の申立てをする(124条1項1号、民事訴訟規則51条)。② 相手方Xが受継の申立てをする(126条)。③ 裁判所が職権で続行命令を出す(129条)のいずれかの手続きが必要となる。

  (2) Yに訴訟代理人が選任されている場合には、本人の死亡によっても訴訟代理権は消滅せず(58条1項1号)、訴訟手続は中断しない(124条2項)。
 この場合、訴訟代理人がYの相続人のために訴訟を追行することになる。

第2 Zとの関係における訴訟手続

1 本件において、X・Y間の訴訟手続をZとの関係で続行するために採り得る法的手段としては、参加承継の申出(51条前段)及び訴訟引受の申立て(50条1項)が考えられる。もっとも、本件におけるZは、被告Yから係争建物を賃借し、占有している者であり、自ら進んで被告としての地位を望むとは考え難い。そこで、Xとしては、Zの自発的な参加を待つのではなく、X自身の主導により確実に手続を続行できる訴訟引受の申立てを行うべきである。
 そこで、本件において、XのYに対する請求は「賃貸借契約の終了に基づく建物収去土地明渡請求」であるのに対し、Zに対する請求は「土地所有権に基づく建物退去土地明渡請求」となる。このように、旧請求が債権的請求権、新請求が物権的請求権であり、訴訟物たる権利義務そのものを承継したとはいえない場合であっても、50条1項の「訴訟の目的である義務……を承継した」といえるか。承継人の範囲が問題となる。

2 この点、50条1項の趣旨は、訴訟係属中に係争物の譲渡等があった場合でも、判決の効力を承継人に及ぼすことで紛争の蒸し返しを防止し、訴訟経済を図る点にある。また、承継人は旧当事者のなした訴訟追行の結果を利用しうる関係にある。  
 そこで、「訴訟の目的である義務」を承継したといえるためには、必ずしも旧債務そのものを承継したことを要せず、紛争の主体たる地位の承継があれば足りると解すべきである。具体的には、(ⅰ)新旧両請求において紛争の主要な争点が共通しており、(ⅱ)旧当事者による訴訟追行の結果を新当事者に及ぼすことが手続保障の観点から不当でない場合に、承継が認められる。

3 こYの土地明渡義務には、建物の占有者を退去させる義務も実質的に包含されており、ZはYから建物を賃借することで、この紛争の対象となっている客体の占有という事実状態、すなわち紛争の主体たる地位を承継したといえる((ⅰ)充足)。
 また、ZはYから建物を借り受けた者として、Yの占有権原の有無に依存する立場にあり、Yが追行した訴訟の結果をZに及ぼしてもZに不意打ちとはならず、手続保障上問題はない((ⅱ)充足)。
 したがって、Zは「訴訟の目的である義務」を承継したといえる。

4 以上より、Xは裁判所に対し、Zへの訴訟引受の申立てを行うべきである。

以上

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