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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題58 和解契約の解除

目次

 

【参考答案】

第1 訴訟上の和解の解除の可否について

1 前提として、XはYの債務不履行を理由に本件訴訟上の和解を解除しようとしているところ、かかる解除は認められるか。訴訟上の和解の法的性質及び既判力の有無が問題となる。

2 この点、訴訟上の和解は、期日において当事者が訴訟終了の合意をするという訴訟法的側面と、争いの対象となっている権利関係について相互に譲歩して合意をするという実体法的な側面(民法695条)の双方の性質を併せ持つものである。そうすると、当事者の自律的な紛争解決手段たる和解の内容に重大な瑕疵がある場合にまで既判力を肯定し、効力を維持することは当事者の意思を害し妥当でない。
 したがって、和解の内容に実体法上の無効・取消原因等の瑕疵がある場合には、当該和解は無効となり、既判力は生じないと解するのが相当である。

3 本件では、和解の内容に重大な瑕疵があるとは認められないため、本件訴訟上の和解には既判力が生じている。
 もっとも、既判力は、和解成立時における権利・法律関係の存否の判断に生じるところ、Xが主張する解除原因たるYの履行遅滞は、和解成立時である第1審口頭弁論期日より後に生じた事由である。したがって、かかる事由に基づく解除の主張は、基準時後の事由によるものであるから、既判力によっては遮断されない。よって、Xによる本件和解の解除は有効である。

第2 前訴の訴訟係属の有無について

1 和解の解除が有効であるとして、前訴の訴訟終了効も遡及的に消滅するか。
 Yは、本件後訴は二重起訴の禁止(142条)に抵触し不適法であると主張するところ、和解の解除により前訴の訴訟終了効も遡及的に消滅するのであれば、前訴に訴訟係属が認められ、二重起訴に当たることから問題となる。

2 この点、訴訟上の和解が解除され、実体法上の効力を失ったとしても、一度生じた訴訟終了の効果まで当然に覆るものではないと解する。
 なぜなら、訴訟上の和解には、私法上の契約としての側面に加え、訴訟手続を終了させるという訴訟法上の効果が付与されており、手続の法的安定性を確保するため、この効果は実体法上の契約の効力とは区別して判断されるべきだからである。
 したがって、和解の内容に瑕疵がある場合とは異なり、後発的な債務不履行による解除の場合には、訴訟終了効は異動を生じず、前訴は終了したままであると解するのが相当である。

3 そうだとすれば、前訴は既に終了しており、「裁判所に係属する事件」には当たらない。よって、後訴は二重起訴の禁止に触れず、適法である。

第3 Xがとり得る他の手段について

1 なお、Xとしては、後訴提起以外に、前訴の訴訟終了効の消滅を主張して、前訴裁判所に対し期日指定の申立て(93条1項参照)による和解の解除主張という手段を採り得る。

以上

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