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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題38 違法収集証拠

目次

 

【参考答案】

1 Xの提出した証拠は、XがSに対し暴行を加えて無理やりスマートフォンを奪うという、実体法上違法な手段を用いて獲得された違法収集証拠である。民事訴訟法には違法収集証拠の証拠能力に関する明文の規定が存在しないところ、このような違法な手段で収集された証拠であっても無制限に証拠能力が認められるか、その許容性が問題となる。

2 この点、民事訴訟法上、違法収集証拠の証拠能力に関する明文の規定は存在しないものの、一方当事者が違法に収集した証拠を無制限に許容することは、当事者間の公平を害し、ひいては公正かつ適正な裁判に対する国民の信頼を損なうため許されない。
一方で、違法収集証拠であることの一事をもって直ちに証拠能力を一律に否定することは、かえって真実発見の要請に反するおそれがある。
 そこで、違法収集証拠の証拠能力の有無は、①被侵害利益の重大性、②証拠収集態様の反社会性、③当該証拠の重要性や代替証拠の有無等による真実発見の必要性などの諸般の事情を総合考慮し、当該証拠を採用することが信義則(民事訴訟法2条)に反して許されないといえるか否かによって決すべきである。

3 Xの提出した証拠は、Sの就寝中に勝手にスマートフォンを閲覧し、Sへの暴行を加えた結果、得られたものであり、Sのプライバシー権・身体の安全を侵害するものであり、被侵害利益は重要である。
 また、Sへの殴打行為は、Sの身体に対する不法な有形力の行使として暴行罪(刑法208条)を構成することから、収集態様は著しく反社会的である。
 確かに、秘かに行われる不貞行為の性質上、S・Y間で交されたSNS上のやりとりは、不貞行為を立証するための極めて重要な証拠であるといえる。仮にこれが不貞行為を立証する唯一の証拠であった場合、真実発見の必要性は高いとも思える。
 しかし、いかに真実発見の要請が高いとはいえ、暴力という著しく反社会的な手段によって重大なプライバシー侵害を伴って収集された証拠を法廷で許容することは、民事訴訟における当事者間の公平を著しく害するのみならず、裁判所が違法行為を助長することにもなりかねず、司法に対する国民の信頼を根底から損なうものである。したがって、本件証拠を採用することは、信義則(民事訴訟法2条)に反し許されないと評価すべきである。

4 よって、本件証拠の証拠能力は否定されるべきであり、裁判所はYの主張を容れ、この証拠の申出を不適法として却下すべきである。

以上

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