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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題8 代表権と表見代理

Law Practice 民事訴訟法 〔第5版〕
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【参考答案】

第1 表見法理の適用の可否について

1 法人が当事者となる場合、法人はその代表者によって訴訟追行をしなければならない(民事訴訟法(以下法令名省略)37条、34条)と規定されている。一方、本件において、XがY社の代表者として訴状に記載したAは、Y社の取締役および代表取締役に就任した事実がなく、実体法上の代表権を有していない。そのため、Aの名称が記載された訴状の送達は、正当な権限を有する代表者に対する送達とはいえず、無効となるのが原則である。
 もっとも、AはY社の商業登記簿に代表取締役として登記されており、Xはこれを信頼して訴えを提起している。そこで、原告保護の観点から、会社法等の私法上の表見法理(会社法908条2項)を訴訟手続に類推適用し、AをY社の適法な代表者として扱うことができないか。

2 この点、私法上の表見法理は、取引の相手方を保護し、取引の安全を図るために設けられた規定である。他方で、訴訟手続においては、手続の明確性・安定性や画一的処理が強く要請される。
 したがって、取引行為と異なる訴訟手続において、会社を代表する権限を有する者を定めるにあたっては、表見法理は類推適用されないと解する。

3 そうすると、AをY社の代表者として扱うことはできず、実体法上の代表権を有しないAに対してされた訴状の送達(138条1項、103条1項)等の第1審における手続は、無権代表者に対してされたものとして無効である。

第2 控訴審が採るべき判決

1 第1のとおり、第1審判決は、正当な代表権を有しないAに対して訴状の送達がなされ、Y社が適法な代表者によって手続に関与する機会を与えられないままされたものである。同判決は、当事者の手続保障を欠いた重大な違法があるといえるため、控訴審裁判所は、第1審判決を取り消すべきである(306条)。

2 もっとも、本件訴えは実在するY社を被告とするものであり、代表者の表示に誤りがあるにすぎない。
 そこで、裁判所は直ちに訴えを不適法として却下するのではなく、原告Xに対して代表者の表示の補正を命じ、正当な代表者に対してあらためて訴状を送達させて審理を進めさせるべきである(137条1項)。
 また、被告Y社は第1審での審理に関与できていない以上、Y社の審級の利益を保護するため、上記の補正手続および本案の審理は、第1審裁判所において行わせるのが相当である。

3 以上より、控訴審裁判所は、第1審判決を取り消した上、事件を第1審裁判所に差し戻す判決をすべきである(308条1項本文)。

以上

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