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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題5 忌避事由

Law Practice 民事訴訟法 〔第5版〕
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【参考答案】

1 Xは、控訴審の裁判長Bが訴訟代理人Cの義父であったことを理由として上告している。Xの上告が認められるためには、上告理由(民事訴訟法(以下法令名省略)312条)が認められる必要がある。
 そこで、忌避事由のある裁判官が関与した判決が上告理由となるか、また、その前提として、忌避事由たる「裁判の公正を妨げるべき事情」(24条1項)が認められるかが問題となる。

 2(1) まず、Bに忌避事由が認められるか。24条1項の「裁判の公正を妨げるべき事情」の意義が問題となる。

  (2) 忌避制度の趣旨は、裁判の公正に対する当事者及び国民一般の信頼を確保する点にある。そして、裁判制度の信頼を維持するためには、裁判官が現に公平中立に職務を執行することのみならず、外部から見て公平な裁判がなされているという公平性・中立性の外観も不可欠である。
 そこで、「裁判の公正を妨げるべき事情」とは、裁判官と当事者・事件との間の特殊な関係からみて、裁判官が不公平な裁判をするおそれがあるとの合理的な疑いを、一般人をして抱かしめるに足りる客観的事情をいうと解する。

  (3) 本件において、裁判長Bは、一方当事者Yの訴訟代理人Cの義父である。このような密接な親族関係は、一般国民の視点からみて、裁判官の公平性や中立性に重大な疑念を抱かせる客観的事情であるといえる。
 したがって、Bには「裁判の公正を妨げるべき事情」が認められる。

 3(1) 次に、忌避事由のあるBが関与してなされた控訴審判決に対する上告が認められるか。

  (2) 312条2項2号は、「法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと」を絶対的上告理由として定める。同号は除斥事由(23条)のある裁判官の関与を典型的に想定する規定である。
 一方、忌避は除斥とはその性質を異にする。すなわち、除斥の裁判が確認的裁判であるのに対し、忌避の裁判は形成的裁判である。忌避事由のある裁判官であっても、忌避の裁判によって初めて職務から排除されるのであり、忌避の裁判がなされるまでの訴訟行為は有効である。
 したがって、忌避の裁判を経ないまま終局判決がなされた場合には、たとえ忌避事由が存在していたとしても、上訴において忌避事由の存在を主張することはできないと解すべきである。

  (3) 本件においても、Bに対する忌避の裁判はなされていない以上、312条2項2号の上告理由には該当しない。

 4(1) もっとも、本件ではXは控訴審の手続中にBとCの姻族関係を知らず、忌避の申立てをする機会がなかった。そこで、裁判官に忌避事由に該当しうる事情の開示義務を認め、その違反を理由に上訴を認めることができないかが問題となる。

  (2) この点、上記開示義務を認める条文上の根拠はなく、また、忌避事由の有無は具体的事案ごとに判断されるものであって、裁判官にその判断と開示を義務付けることは困難である。また、裁判官が自発的に事件を回避することは職業倫理上の責務として望ましいとしても、回避はあくまで司法行政上の措置であり、その懈怠が直ちに訴訟法上の違法を構成するものではない。

  (3) したがって、XはBが事情を秘匿し、忌避権を蹂躙したと主張するが、Bに法的義務としての開示義務や回避義務が認められない以上、その違反を理由として上訴を認めることはできない。

5 以上より、Xの上告は認められない。

以上

【注意点】

 上記答案は、判例の立場とは異なる学説の立場を採用して論理を構成しています。検討の際は、以下の点に留意して読んでください。

参考答案2(3) 忌避事由該当性の当てはめについて

 参考判例①の最判昭和30・1・28民集9巻1号83頁は、裁判官が訴訟代理人の一親等の姻族(娘婿)であった事案において、それだけでは直ちに忌避事由があるとはいえないとして忌避事由該当性を否定しています。
 もっとも、同判決は、中立性の外観の観点から、学説の批判が強いと解説されています。また、判例の立場に立ち忌避事由を否定した場合、忌避事由につき終局判決後に上告で争えるかという論点について論じる必要がなくなります。
 そこで、出題趣旨としても、忌避事由を肯定した上で、次の論点について論じることが求められていると考え、学説の立場から答案を構成しています。

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