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参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題7 相続による株式の準共有

目次

【答案構成】

第1 小問(1)について

1(1) 訴訟選択について

 (2) 株式の相続の効果と問題提起(原告適格が認められるか)

2 規範定立(会社法106条の効果と例外事由について)

3 当てはめ

4 結論

第2 小問(2)について

1 問題提起

2 規範定立(権利行使者の指定の性質と決定方法)

3 当てはめ

4 結論

 

【参考答案】

第1 小問(1)について

1(1) Xは、Y社に対し、本件総会が開催されていない、あるいは開催されたとしても著しい瑕疵があり決議が存在するといえない場合には、株主総会決議不存在確認の訴え(会社法(以下、法令名省略)830条1項)を提起し、仮に本件総会の決議が存在すると認められる場合であっても、招集手続の法令違反等を理由として、株主総会決議取消しの訴え(831条1項)を提起すると考える。

 (2) Aの死亡によりAが保有していた本件株式が相続対象となる。株式は、自益権のみならず議決権等の共益権をも含むから、可分債権(民法427条)とみることはできず、共同相続人の準共有となる(民法898条)。
 そうすると、いずれの訴えを提起するにしても、Xは本件株式の準共有者の一人にすぎず、会社法106条本文に定める権利行使者の指定及びY社への通知を欠いているため、これらの訴えの訴訟要件たる原告適格が認められるかが問題となる。

2 この点、提訴権も共益権の一種であるから、106 条本文にいう「権利行使」には、共有株主としての地位に基づく訴訟提起も含まれる。
 したがって、権利行使者を定め、会社に通知しなければ、原則として原告適格は認められない。
 もっとも、不当な結果が生じる「特段の事情」が存する場合には、例外的に権利行使者の指定・通知がなくとも、権利行使が可能であり、原告適格が認められる。

3 本件において、Xらは、本件株式について権利行使者の指定・通知をしていないため、原告適格が認められないのが原則である。
 もっとも、本件株式は、Y社の発行済株式の51%を占めており、その議決権行使なくして本件株主総会は定足数を満たすことはできず、有効な決議は成立し得ない(341 条)。このような状況において、Y社が本件決議が有効に成立したとして商業登記を行っていることから、本案においてY社は、106 条の指定・通知が履践されたことを前提として株主総会決議の有効な成立を主張するものと解される。
 一方、106 条の手続の欠缺を理由として原告適格を争うことは、株主総会の定足数未充足という瑕疵を自認する本案における自己の立場と矛盾する主張であり、106条の趣旨である会社の事務処理上の便宜を同一訴訟手続内で恣意的に使い分けるものとして、訴訟上の防御権濫用に当たり、信義則に反し、許されない特段の事情があるといえる。

4 よって、特段の事情が存在するから、Xには本件訴えの原告適格が認められる。

第2 小問(2)について

1 Xは、Y社に対し、会計帳簿の閲覧・謄写を請求している(433条1項)。この会計帳簿閲覧・謄写請求権も株主の「権利の行使」に当たり、106条の権利行使者の指定・通知が必要となるところ、Xに権利行使が認められるか。

2 権利行使者の指定に全員一致を要求することは、共有者の1人でも反対すれば全員の株主権の行使が不可能となり、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた同条の趣旨に反する結果となる。また、権利行使者の指定は、株式そのものを処分・変更する手続でなく、共有物たる株式の管理に関する行為であるから、共有持分の価格に従い、その過半数の決定によって決せられる(民法252 条本文)。

3 本件では、Xの法定相続分は4分の3であり、本件株式の共有持分の過半数を有している。過半数持分を有するXが、Y社に対し上記請求をする行為は、自らを権利行使者として指定・通知し、その権利を行使したものと評価することができる。
 確かに、上記のように評価すると、少数派共有者の協議に参加する機会を奪うことになりかねない。しかし、本件では共同相続人間で対立が生じ協議が難航しているという事情があり、かつ、会計帳簿閲覧権は、株式の価値を維持・保全するための監督的是正権としての側面が強い権利であるから、他の共有者の利益を直接害するものではく、多数派であるXの権利行使を認めるべき実益は大きい。

4 よって、Xが権利行使者であるとして指定・通知(106条)がなされているから、Xによる会計帳簿閲覧・謄写請求は、有効な権利行使として認められる。

以上

 

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