目次
【答案構成】
1(1) kg(請求原因):所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求
(2) 規範(所有権に基づく妨害排除請求権の要件)
(3) 当てはめ
2(1) E(抗弁):登記保持権原の抗弁
(2) 規範(有効な抵当権設定契約に基づく登記存在の要件)
(3) 当てはめ
3(1) R₁(再抗弁1):利益相反行為(826条)による抵当権設定契約の無効
(2) 規範定立(「利益が相反する行為」の意義と外形判断説)
(3) 当てはめ
4(1) R₂(再抗弁2):代理権濫用(107条)による抵当権設定契約の無効・当然に充足される要件への当てはめ
(2) 規範定立(「自己又は第三者の利益を図る目的」の判断基準)
(3) 「自己又は第三者の利益を図る目的」の当てはめ
(4) 「自己又は第三者の利益を図る目的」についての悪意・有過失の当てはめ
5 結論
【参考答案】
1(1) Xは、Yに対し、所有権(民法(以下法令名省略)206条)に基づく妨害排除請求権としての甲土地抵当権設定登記抹消登記請求をするものと考える。
(2) その要件は、①Xが甲土地所有権を有していること、②甲土地にY名義の抵当権設定登記が存在することである。
(3) XはBの子であり、Bの死亡により甲土地を「相続」(896条本文)しているから、甲土地所有権を承継取得している(要件①充足)。また、甲土地には、2022年5月以降、Y名義の抵当権設定登記が存在する(要件②充足)。
2(1) これに対し、Yは、登記保持権原の抗弁として、抵当権設定契約により、甲土地抵当権設定登記を保持する権原を有するとの反論をすると考える。
(2) その要件は、(ⅰ)被担保債権の発生原因事実、(ⅱ)(ⅰ)の債権を担保するため甲土地について抵当権設定契約を締結したことである。
(3) 本件では、YD間消費貸借契約(587条)の締結により、YのDに対する4000万円の貸金債権が被担保債権として存在している(要件ⅰ)。
そして、Aは、当時未成年者であったXの親権者(818条1項)として、その包括的な代理権(824条本文)に基づきXを代理し、(ⅰ)の債権を被担保債権として、Yとの間で甲土地に抵当権設定契約を締結した(要件ⅱ)。
3(1) 上記Yの抗弁に対し、Xは、本件抵当権設定契約は親権者Aと子Xとの「利益が相反する行為」(826条1項)に当たり、無権代理行為(113条1項)として自身に効力は及ばないと再抗弁する。
そこで、いかなる行為が「利益が相反する行為」に当たるか明らかでなく問題となる。
(2) 826条の趣旨は、子・親権者間で利益が対立する場合に子の利益が害されることを防止する点にある。もっとも、取引安全との調和を図る観点から、行為の動機・目的等を考慮すべきでない。
そこで、利益相反行為に当たるか否かは、行為の外形に照らして客観的に判断すべきであると解する。
(3) 本件抵当設定契約により融資を受けるという利益を得るのはⅮであり、外形上Aに利益は生じない。そのため、本件抵当権設定契約という行為の外形から、客観的にXとAの利益が相反するとはいえず、利益相反行為には当たらない。
4(1) そこで、本件抵当権設定契約は代理権の濫用(107条)に当たり、無権代理とみなされ、本件抵当権設定契約の効果がXに帰属しないと主張する。
本件抵当権設定契約は「行為」に、親権者Aは「代理人」に当たる。そして、抵当権設定契約は「財産に関する行為」(824条本文)であり、代理権の「範囲内」の行為となる。
では、Aに「自己又は第三者の利益を図る目的」が認められるか。
(2) 親権者による子の代理行為は、利益相反行為を除き、親権者の広範な裁量に委ねられている。
したがって、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に反すると認められる特段の事情がない限り、「自己又は第三者の利益を図る目的」は認められないと解する。
(3) 本件抵当権設定行為は、Xに無関係のⅮの債務を担保するものであり、甲土地を失うという不利益のみをXに一方的に負わせるものである。
確かに、Aが本件契約を締結したのは義兄Cであり、これまで母子の世話をしてきたCの頼みを断れなかったという事情がある。しかし、親権者の裁量は、あくまで子の利益という目的の範囲内で認められるものであって、子の利益と無関係な第三者であるC及びD社のために、不利益となるリスクに晒す行為は、子の財産管理のため認められた裁量の範囲を逸脱しているといわざるを得ない。
したがって、本件抵当権設定契約は法の趣旨に反すると認められる特段の事情があるといえ、「第三者」であるD「の利益を図る目的」が認められる。
(4) また、Yは、本件融資の用途がDの事業資金であり、Xの利益にはならないことを知っており、本件抵当権設定が「第三者の利益を図る目的」でなされていることを知っていたといえる。よって、Yは悪意であったと認められる。
したがって、Aが本件抵当権設定契約を締結したことは、代理権の濫用に当たり、無権代理とみなされ、Xはこれを再抗弁として争うのであるから、追認の意思はなく、本件抵当権設定契約の効果がXに帰属しない。
5 以上より、Yの登記保持権原の抗弁は認められず、Xの請求は認められる。
以上

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