目次
【答案構成】
第1 AのDに対する請求について
1(1) kg(請求原因):所有権に基づく妨害排除請求権としての甲土地所有権移転登記抹消登記請求に代わる所有権移転登記請求
(2) 規範(所有権に基づく妨害排除請求権の要件)
(3) 当てはめ
2(1) E(抗弁):所有権喪失の抗弁+問題提起(A代理人BによるCとの売買契約締結と代理によるAへの効果帰属)
(2) 規範(代理の要件)
(3) 当てはめ
3(1) R(再抗弁):代理権濫用による代理の効果不帰属
(2) 規範(代理権濫用の要件)
(3)ア 当てはめ(要件「自己の利益を図る目的」)
イ 当てはめ(要件 相手方Cの悪意・有過失)
(4) 小結論
4(1) D(再々抗弁):94条2項類推適用
(2) 規範定立(94条2項類推適用)
(3) 当てはめ
5 結論
第2 AのBに対する請求
1 kg(請求原因):債務不履行に基づく損害賠償請求
2 規範(債務不履行に基づく損害賠償請求権の要件)
3(1) 当てはめ
(2) Bの抗弁(免責事由)の不存在認定
4 結論
【参考答案】
第1 AのDに対する請求について
1(1) Aは、Dに対し、所有権(民法(以下法令名省略)206条)に基づく妨害排除請求権としての甲土地所有権移転登記抹消登記請求に代わる所有権移転登記請求をすると考える。
(2) その要件は、①Aの甲土地所有、②甲土地上のD登記名義の存在である。
(3) 本件では、少なくとも2024年4月頃までは甲土地所有権をAが有していた(要件①充足)。そして、CD間売買契約(555条)により、現在、甲土地所有権登記名義はDとなっている(要件②充足)。
2(1) これに対し、Dは所有権喪失の抗弁を主張すると考える。すなわち、(ⅰ)Aの代理人BとC間の有効な売買契約により、甲土地の所有権がAからCに移転し、(ⅱ)CD間売買契約により、所有権がCからDに移転したことで、Aは所有権を喪失し、要件①を充足しないというものである。
そこで、Dの所有権喪失の抗弁がが認められるためには、(ⅰ)の売買契約の効果がAに帰属する必要があるところ、Bの代理行為が有効であるかが問題となる。
(2) その要件は、(a)顕名、(b)代理行為、(c)(b)に先立つ代理権授与(99条1項)である。
(3) 本件では、BはAの委任状を示して契約交渉を行っているから、Aのためにすることを示している(要件a充足)。そして、BはAを代理してCと甲土地売買契約を締結しており(要件b充足)、その売買契約締結に先立ち、AはBに甲土地売却のための代理権を授与している(要件c充足)。
したがって、一見するとBの代理行為は有効であり、その効果はAに帰属するように思える。
3(1) これに対し、Aは再抗弁として、Bの(ⅰ)売買契約に関する代理行為は、代理権の濫用(107条)に当たり、Aの追認がない限り(113条1項参照)、無権代理とみなされ、(ⅰ)売買契約の効果はAに帰属しないと主張する。
(2) その要件は、(ア)代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で当該意思表示をしたこと、(イ)相手方が(ア)の目的につき悪意又は有過失であることである。
(3)ア Bは多額の借金を抱え、甲土地の売却代金を着服し、その返済に充てようと考え、「代理権の範囲内の行為」である(ⅰ)売買契約を締結している。これは、本人であるAの利益のためではなく、「自己の利益を図る目的」で代理行為をしたことにほかならない(要件ア充足)。
イ そして、相手方であるCは、Bが金銭トラブルを何度か起こしていることを知っており、甲土地の実勢価格が2200万円を下らないことを認識しながら、それを大幅に下回る1500万円という廉価で購入しようとしていた。この際、C自身、この話に少なからず不安を覚えていた。これらの事情は、Bの代理行為が、本人Aの利益のためではなく、B自身の何らかの不当な利益のために行われていることを強く疑わせるものである。それにもかかわらず、CはBが委任状や登記識別情報を持参していたことのみを理由に取引に及んでおり、本人であるAに意思を確認するなど、買主として通常期待される基本的な注意義務を怠ったといえる。
したがって、Cには、Bの図利目的を「知ることができた」といえるだけの過失があったと認められる(要件イ)。
(4) Aは代理権濫用について、再抗弁として主張することから、追認しないという意思表示といえ、無権代理として(ⅰ)売買契約の効果はAに帰属しない。
4(1) これに対しDは、再々抗弁として、仮にBC間の売買契約がAに効果を帰属しないとしても、Dは94条2項の類推適用により保護され、甲土地の所有権を有効に取得する結果、Aは所有権を喪失すると主張する。
(2) 94条2項の趣旨は、虚偽の外観作出に帰責性のある者と虚偽の外観を信頼した第三者とを利益衡量し、後者を保護することで、取引安全を図る点(権利外観法理)にある。
そこで、(イ)虚偽の外観の存在、(ロ)虚偽の外観作出について真の権利者の帰責性、(ハ)第三者の虚偽の外観への正当な信頼が認められる場合には、上記趣旨が妥当し、94条2項を類推適用することができると解する。
(3) 本件において、(ⅰ)売買契約はBの代理権濫用によりAに効果が帰属しないから、Cは甲土地の所有権を取得していない。にもかかわらず、甲土地の登記名義はCに移転されている。そのため、Cを所有者とする虚偽の外観たる登記が存在するといえる(要件イ)。
しかし、AはCの甲土地所有権移転登記という虚偽の外観作出の意図を有しておらず、Aがこれらの事情を知ったのはCD間売買契約締結後であって、虚偽の外観たるC名義登記をあえて放置したという事情も認められない。そのため、Aには、C名義登記という虚偽の外観作出についての帰責性は認められない(要件ロ不充足)。
したがって、94条2項類推適用は認められない。
5 よって、AのDに対する甲土地所有権移転登記抹消登記請求に代わる所有権移転登記請求請求は認められる。
第2 AのBに対する請求
1 AはBに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求をすると考える。
2 その要件は、①債務の発生原因、②「債務の本旨に従った履行」がないこと又は「債務の履行が不能である」こと、③「損害」の発生とその額、④②と③との間の相当因果関係である。
3(1) AはBに対し、甲土地売却のための代理権を授与している。これは、当事者の意思を合理的に解釈すれば、Aを委任者、Bを受任者とする委任契約(643条)が成立したものと解される。この契約により、Bは、Aのために善良な管理者の注意をもって(644条)、甲土地を適正価格で売却するという委任事務を処理する義務を負う(要件①充足)。
Bは、Aから委任された甲土地の売却代金を、Aのためにではなく、自己の借金返済のために着服した。このBの行為は、受取物引渡義務(646条)及び、受任者として誠実に事務を処理すべき善管注意義務に違反するものであり、「債務の本旨に従った履行」がない場合に該当する。
Bの上記債務不履行により、Aは、本来であれば得られるはずであった甲土地の適正な売却代金相当額を失うという損害を被った。したがって、その損害額は、甲土地の実勢価格2200万円と解するのが相当である。Bの債務不履行がなければ、Aはこの損害を被ることはなかったから、両者の間には相当因果関係も認められる。
(2) これに対し、Bから債務不履行がBの責めに帰することができない免責事由があったと抗弁は、Bの代金着服行為が故意によるものであって、帰責事由があることは明らかであるから、成り立ち得ない。
4 よって、AはBに対する損害賠償請求は2200万円の限度で認められる。
以上

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