目次
【答案構成】
1(1) kg(請求原因):所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権
(2) 要件:①Aの甲土地所有、②D名義の抵当権設定登記の存在
(3) 当てはめ
2(1) E1(抗弁):登記保持権原の抗弁(有権代理)
(2) 要件:(ⅰ)代理行為、(ⅱ)顕名、(ⅲ)代理権の授与
(3) 当てはめ(Cには(ⅲ)代理権がない→無権代理行為として抗弁1否定)
3(1) E2(抗弁):登記保持権原の抗弁(表見代理(109条1項))
(2)ア 要件:(a)代理権授権表示、(b)代理権限内の行為
イ 規範定立(白紙委任状交付事実が代理権授与表示と評価できるか)
(3) 当てはめ(Cによる行使(非輾転予定型・間接型)かつ、委任事項欄濫用型であることを認定し、Aの帰責性が低いことから要件(a)を否定→抗弁2否定)
4 結論
【参考答案】
1(1) Aは、Dに対し、所有権(民法(以下法令名省略)206条)に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求をすると考える。
(2) その要件は、①Aが甲土地を所有していること、②甲土地につきD名義の抵当権設定登記がなされていることである。
(3) 本件において、甲土地はAの所有する土地であるから、要件①を充たす。また、問題文の事実によれば、「甲土地につき抵当権設定登記を備えた」とあることから、甲土地にはDを登記名義人とする抵当権設定登記が存在しており、要件②を充たす。
したがって、その要件を充足する。
2(1) これに対し、Dは、登記保持権原の抗弁として、Aの代理人Cとの間で本件抵当権設定契約を締結していることから、本件抵当権設定登記を保持する権原があるとの抗弁を主張すると考える。
(2) かかる抗弁が認められるためには、代理行為が有効であり、本件抵当権設定契約の効果がAに帰属する必要がある。
その要件は、(ⅰ)代理行為、(ⅱ)顕名、(ⅲ)(ⅰ)に先立つ代理権の授与(99条1項)である。
(3) 本件において、Cは、Dとの間で甲土地に抵当権を設定する契約を締結しており(要件(ⅰ))、その際にAの代理人と称していることから、顕名も認められる(要件(ⅱ))。
しかし、AがCに対して代理権を授与した事実はなく、Bに与えた権限もBのAに対する貸金債権を担保するための抵当権設定登記手続に関するものであった。
本件では、白紙委任状を交付していることから、B以外の者が代理人となることをも認めていたとも考えられるが、AはBに抵当権設定登記手続を任せることとしており、白紙委任状がBから第三者へ輾転流通することは予定していない。したがって、Aは、B以外の者が代理人となることまで許容していたとは認められないから、Cは代理権を有しておらず(要件(ⅲ)不充足)、その行為は無権代理行為となる。
そのため、原則として、その効果は本人Aに帰属せず(113条1項)、Dによる登記保持権限の抗弁は、本人Aの追認がない以上、認められない。
3(1) そこで、Dは、Aが白紙委任状等の登記関係書類一式をBに交付した点を捉え、109条1項の表見代理が成立し、契約の効果がAに帰属すると主張すると考える。
(2)ア その要件は、(a)「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した」こと(109条1項本文)、(b)表示された「代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為」であることである。
イ そして、白紙委任状交付が代理権授権表示(要件(a))に当たるかついては、外観作出についての本人の帰責性と相手方の信頼保護との調和の観点から、授権表示の有無を判断すべきである。
具体的には、誰が白紙委任状を行使したか、及びどの部分が濫用され、本来の委任事項と質的に乖離しているか等の事情を総合考慮し、本人の帰責性が相手方の信頼を犠牲にできないほど重いといえる場合に認められると解する。
(3) 本件では、白紙委任状を行使したのは、Aが交付した相手であるBではなく、Bから交付を受けたCが、代理人欄にCの名を記入し、これを行使している(間接型)。
また、委任事項欄についても、Aが本来委任した「BのAに対する100万円の貸金債権の担保」という目的と、Cが行った「CのDに対する500万円の貸金債務の担保」という行為とは、その目的・金額・当事者のいずれにおいても全く異なり、質的に著しく乖離している。
以上を総合考慮すると、本人Aの意思が全く介在しない第三者Cによって、代理人欄及び委任事項欄の濫用がなされた事案であるといえる。このように、委任の趣旨から著しくかけ離れた行為が、当初の相手方ですらない第三者によって行われた場合にまで本人に責任を負わせるのは酷であり、Aの外観作出についての帰責性は極めて低い。
したがって、Aの帰責性は、Dの信頼を犠牲にできないほど重いとはいえないから、本件では授権表示があったとは認められず、要件(a)を充たさない。
よって、Dの反論は認められない。
4 よって、AのDに対する抵当権設定登記の抹消登記手続請求は認められる。
以上
【悩みどころ】
参考答案中、3において、109条1項の表見代理の成立を否定したため、Aの再抗弁として相手方Dの悪意有過失(109条1項但書)についての検討に立ち入る必要がなくなったため、検討することなく結論を示した。問題文中にはDの過失に関する事実が記載されているため、この点を拾い上げて論じることも可能であったが、授権表示の否定という主筋で結論が導ける以上、過失の検討は結論に影響せず、蛇足となると判断し、答案全体の論理の明確さを優先して今回は記載を省略した。
なお、解説にも「判例理論の一般的理解に従えば……代理権授与表示を否定することになる」とあり、続けて、輾転流通する危険を重視する立場を採用した場合について述べられていることから、問題文中のDの過失に関する記述は、後者の立場を採った場合に、授権表示を肯定した上で、109条1項但書によって表見代理の成立を否定し、最終的な結論に至れるように準備された事実であると解釈した。

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