目次
【答案構成】
1 設問に対する応答+検討内容の提示
2(1) 問題提起(本件定款規定は、310条1項に違反し、無効とならないか)
(2) 規範定立(定款による議決権行使の代理人資格の制限)
(3) 当てはめ(代理人資格を株主に限定した趣旨=株主総会が株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨→合理的な理由による相当程度の制限→本件定款規定は310条1項に違反せず、有効)
3(1) 問題提起(本件定款を形式的に貫くと、かえって株主の実質的な議決権行使の機会を不当に奪い、310条1項の趣旨に反しないか)
(2) 規範定立(そこで、形式的に定款に違反する場合であっても、①当該代理人の出席によって株主総会が攪乱されるおそれがなく、かつ、②その代理行使を認めないと株主が事実上議決権行使の機会を奪われるに等しい特段の事情がある場合には、例外的に定款の趣旨に反せず、その効力は及ばないと解する。
(3) 当てはめ(社会勉強目的での参加=①認定。株主A自身は、特段の事情なく本件総会に出席することが可能であった=②否定)
4(1) 問題提起(裁量棄却が認められないか。)
(2) 当てはめ(受付の確認を経ており、総会の議事も円滑に行われている=違反は著しくない。Bの議決権は1個であるのに比して、決議は圧倒的多数で可決→決議の結果への影響否定。→裁量棄却の要件充足。)
5 結論
【参考答案】
1 本件では、株主ではないBが、株主Aの代理人として議決権を行使している。そこで、Xは、Bの議決権行使は本件定款に違反し、「決議の方法が……定款に違反」する(会社法(以下法令名省略)831条1項1号)として、本件決議の取消しを求める訴えを提起する。
本件訴えが認められるかにつき、まず、本件定款規定の有効性を検討し、これを前提にBの議決権行使が取消事由に当たるか及び裁量棄却について検討する。
2(1) 株主の議決権行使についての代理人資格を株主に限定する本件定款規定は、310条1項に違反し、無効とならないか。
(2) 310条1項は、議決権行使に関する代理人資格につき、合理的理由に基づく相当程度の制限を加えることを禁止するものではない。
(3) 本件定款の代理人資格を株主に限定した趣旨は、株主総会が株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができる。
したがって、本件定款規定は310条1項に違反せず、有効である。
3(1) 本件定款は有効であるから、株主ではないBが株主Aの代理人として議決権を行使したことは、原則として定款違反に当たる。
もっとも、310条1項の趣旨は、株主総会当日に出席できない株主に対し、代理人を通じて総会に参加する機会を保障する点にあることから、これを形式的に貫くと、かえって株主の実質的な議決権行使の機会を不当に奪いかねない。
(2) そこで、形式的に定款に違反する場合であっても、①当該代理人の出席によって株主総会が攪乱されるおそれがなく、かつ、②その代理行使を認めないと株主が事実上議決権行使の機会を奪われるに等しい特段の事情がある場合には、例外的に定款の趣旨に反せず、その効力は及ばないと解する。
(3) Bは株主Aの娘であり、社会勉強のために本件総会に出席したにすぎない。そのため、Bの出席によって総会が攪乱されるおそれがあったとはいえない。
しかし、株主であるA自身は、特段の事情なく本件総会に出席することが可能であった。そうすると、Bによる代理行使を認めなかったとしても、Aが事実上議決権行使の機会を奪われるに等しい特段の事情があったとは認められない。
したがって、本件定款の効力はBに及び、本件総会におけるBの議決権行使は本件定款に違反する。そのため、本件決議には、「決議の方法が……定款に違反」するという取消事由(831条1項1号)が存在する。
4(1) 決議の方法に定款違反があるとしても、裁量棄却(831条2項)が認められないか。
(2) Bは、本件総会には受付担当者Cの確認を経て入場し、総会の議事を妨害したといった事実もない。そうすると、定款違反の事実は「重大でない」といえる。
また、Bが行使した議決権はAが保有する1株分にすぎないのに対し、本件決議は圧倒的多数の賛成で可決されている。したがって、Bの1票が決議の結果に「影響を及ぼさないもの」であったといえる。
したがって、本件定款違反は裁量棄却の要件を充たす。
5 よって、本件決議には取消事由が存在するものの、裁量棄却(831条2項)によりXの請求は棄却されるため、認められない。
以上

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