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【参考答案】
第1 小問(1)について
1(1) Bは、Gに対し、民法(以下、法令名省略)121条の2第1項に基づく原状回復請求権としての売買代金200万円の返還請求権を行使すると考える。
(2) その要件は、①売買契約(555条)の成立、②①に基づく売買代金給付、③①の取消原因である。
(3) 本件では、AG間でバイク乙の売買契約(以下「本件売買契約」という。)が締結されており(要件①充足)、AはGに売買代金200万円を支払っている(要件②充足)。
そして、Aは本件売買契約締結時、16歳であったため、未成年(4条)に当たるところ、未成年者が法律行為を行う場合、原則として、その法定代理人の「同意」を要する(5条1項本文)。本件におけるAの法定代理人は、母であるB(818条1項、824条)であるが、Aは、Bの同意を得ることなく本件契約を締結している。
したがって、Bは本件売買契約を取り消すことができ(5条2項、120条1項)、要件③を充足すると考えられる。
2(1) これに対し、Gは、本件売買契約締結時、Aは未成年者であることを黙っていたことから、「詐術を用いた」(21条)として取り消しが制限され、要件③を充足しないとの反論が考えられる。
そこで、Aの黙秘が「詐術」に当たるかが問題となる。
(2) 21条の趣旨は、制限行為能力者保護と取引安全との調整を図る点にある。そのため、「詐術」とは、制限行為能力者が相手方を誤信させるために積極的な言動を用いる場合のみならず、単なる黙秘であっても、制限行為能力者の他の言動とあいまって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと評価できる場合には、「詐術」にあたると解する。
(3) Aは本件売買契約締結時、自らが未成年者であることをGに告げていない。
しかし、GもAの年齢を特に確認しておらず、Aにおいて、自らを成年者であると誤信させるような他の言動があったとは認められない。
そうすると、Aは単に黙秘していたにとどまるから、「詐術」に当たらない。
(4) したがって、Gの反論は認められず、Bによる本件売買契約の取消しは制限されないから、③取消原因は認められる。
3(1) そこで、Gは、Bの売買代金200万円の返還請求権(121条の2第1項)に対し、Aに対するバイク乙の原状回復請求権を被担保債権として、同時履行の抗弁(533条)を主張し、200万円の支払を拒むことができないか。
(2) 契約の取消しによって生じる双方の原状回復義務(121条の2第1項)は、ひとつの契約から生じた債務の清算関係であり、当事者間の公平の観点から、同時履行の関係に立つと解すべきである(533条類推適用)。
(3) 本件において、Aは行為時に制限行為能力者であったことから、Aが負う原状回復義務の範囲は、「現に利益を受けている限度」(121条の2第3項)においてである。
そして、AがGから受領したバイク乙は、交通事故により廃車となっている。
これにより、Aの手元にバイク乙の交換価値は残存しておらず、保険金等により代替利益を得たという事情も見当たらない。したがって、Aの現存利益は0円である。
そうすると、AはGに対し、原状回復義務を負わないことになるから、Gの同時履行の抗弁権の主張は認められない。
4 よって、BはGに対し、121条の2第1項に基づき、売買代金200万円の返還を求めることができる。
第2 小問(2)について
1(1) Bは、Eに対し、121条の2第1項に基づく原状回復請求権としての甲明渡し及び甲所有権移転登記抹消登記請求をすると考える。
(2) その要件は、①売買契約(555条)の成立、②①に基づく甲の引渡し及び甲所有権移転登記、③①の取消原因である。
(3) 本件では、AE間で甲の売買契約(以下「本件甲売買」という。)が締結されており(要件①充足)、AはEに甲の引渡しおよび所有権移転登記を完了している(要件②充足)。そして、Aは本件甲売買時、未成年者であり、法定代理人Bの同意を得ることなく、甲の売買契約を締結しているから、Bは本件甲売買を取り消すことができ(5条2項、120条1項)、原則として要件③を充足すると考えられる。
2(1) これに対し、Eは、AがBの同意を得てきたという誓約書にサインしたことをもって、「詐術を用いた」(21条)と主張し、Bの取消権が制限され、要件③を充足しないとの反論が考えられる。
そして、本件においてAは、Bの同意を得てきたという誓約書にサインするという積極的詐術を用いているから、原則として「詐術」(21条)に当たる。
もっとも、EはAが未成年であることについて悪意であった。このように、相手方が悪意の場合にも、21条が適用され、取消権が制限されるかが問題となる。
(2) この点、詐術を用いた制限行為能力者を特別に保護する必要がない一方、法律行為の有効性を信じた相手方の保護を図る必要性があることにその趣旨がある。
そのため、21条の適用には、詐術を用いたことに加え、相手方が、制限行為能力者を行為能力者であると信じたことが必要となると解する。
(3) 本件で、EはAが未成年であることにつき悪意であった。そのため、Eには21条の適用が認められないから、③の取消原因は認められる。
3(1) そこで、Eは、Bの原状回復請求権に対し、AがEに対して負う、売買代金の返還請求権との同時履行の抗弁権(533条類推適用)を主張し、甲の返還を拒むことが考えられる。
(2) まず、Fに対する借金の返済に充てた100万円については、既存の債務を消滅させるという形で利益がAの手元に現存していると評価できるから、現存利益があるといえる。
次に、Gからバイク乙を購入した200万円については、バイク乙は交通事故で廃車となっており、その交換価値はAの手元に残存していないから、現存利益は認められない。
遊興に使った300万円は、生活費など必要な支出の節約になったわけではなく、浪費として利益は現存しないと解される。
以上より、残金400万円とFに対する借金返済部分の合計500万円が現存利益となる。
(3) したがって、Aの現存利益500万円の返還と甲の明渡し及び甲所有権移転登記抹消登記請求は同時履行の関係に立ち、Eは、Bが500万円を返還するまでの間、Bの請求を拒むことができる。
4 以上より、Bは、Eに対し、Aにより500万円の返還と引換給付として、甲の明渡し及び甲所有権移転登記抹消登記を請求することができる。
以上

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