参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題8 種類株式 

目次

【答案構成】

第1 小問(1)について

1 問題提起(完全無議決権株式の株主Xに株主総会議事録閲覧・謄写請求が認められるか)

2 規範定立(318条4項「株主」の解釈)

3 当てはめ・結論

第2 小問(2)について

1 問題提起(完全無議決権株式の株主Xに株主総会議決権行使書面の閲覧・謄写請求が認められるか)

2 規範定立(311条4項「株主」の範囲(310条7項括弧書き))

3 当てはめ・結論

第3 小問(3)について

1 問題提起(完全無議決権株式の株主Xに株主総会決議取消の訴え(831条1項)の原告適格が認められるか)

2 規範定立(否定説)

3 当てはめ・結論

 

 

【参考答案】

第1 小問(1)について

1 種類株主であるXは、Y社に対し、株主総会議事録の閲覧・謄写請求(会社法(以下法令名省略)318条4項)をしている。XはY社の完全無議決権株式を保有する株主であるが、上記請求が認められるか。

2 318条4項は、「株主及び債権者」は、会社の営業時間内はいつでも、株主総会議事録の閲覧・謄写を請求できると規定する。
 ここにいう「株主」には、文言上、議決権の有無による限定はなされておらず、また、議決権のない株主であっても、株主総会決議は自己の有する株式の財産的価値に重大な影響を及ぼすことから、議事録を確認する実質的な利益を有するため、無議決権株主も含まれると解する。

3 Xは、Y社の種類株式を5万株保有しており、「株主」にあたる。そのため、XがY社営業時間内に株主総会議事録の閲覧・謄写請求をすることで、要件を充足する。
 よって、XによるY社に対する株主総会議事録の閲覧・謄写請求は認められる。

第2 小問(2)について

1 Xによる株主総会議決権行使書面の閲覧・謄写請求(311条4項)は、株主総会議事録と同様に認められるか。

2 311条4項は、「株主」に議決権行使書面の閲覧・謄写請求権を認めている。しかし、ここにいう「株主」には、株主総会決議の決議事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く(310条7項括弧書き)と規定する。

3 Xは、完全無議決権株式の株主であり、本件株主総会決議における決議事項の全部につき議決権を行使することができない者である。
 よって、Xは「株主」(311条4項)には該当せず、株主総会議決権行使書面の閲覧・謄写請求は認められない。

第3 小問(3)について

1 Xは、Y社に対し、他の株主への招集通知漏れを理由として、本件役員選任決議の取消の訴え(831条1項)を提起しようとしているところ、完全無議決権株主であるXに「株主」(同項柱書)として原告適格が認められるか。

2 決議取消訴権は、会社の意思決定の瑕疵を是正し、株主全体の利益を図る共益権であり、議決権行使を実質的に確保するための権利と解される。また、会社法が議決権行使書面等の閲覧権(311条4項、310条7項)を議決権のない株主から除外していることとの平仄を合わせるべきであるから、「株主」には無議決権株主は含まれないと解すべきである。

3 Xは無議決権株主であり、831条1項柱書の「株主」に当たらず、本件株主総会決議取消の訴えを提起する原告適格を有しない。
 よって、Xは、Y社に対し、本件役員選任決議の取消の訴えを提起することができない。

以上

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