参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題59 商号使用許諾者の責任

目次

 

【参考答案】

1 XはYに対し、会社法(以下法令名省略)9条の適用により、Zとの売買契約に基づく債務不履行(民法415条)による損害賠償を請求することが考えられる。
 もっとも、同条の責任を負うためには商号使用の「許諾」が必要であるところ、本件ではYとZの契約においてYの商号使用が禁止されており、Yによる「許諾」は認められない。したがって、同条を直接適用することはできない。
 そこで、会社法9条の類推適用が認められないかが問題となる。

2 この点、名板貸責任の趣旨は、商号使用許諾者と被許諾者の営業主体との混同を招くような外観を信頼して取引に入った第三者を保護する権利外観法理にある。
 そうだとすれば、明示的な許諾がない場合であっても、営業主体の誤認を生じさせるような外観が存在し、外観作出に許諾と同視しうる程度の帰責事由があり、取引の相手方が、許諾者を営業主体であると誤認(善意・無重過失)した場合には、本条の類推適用を認めるべきである。

 3(1) 本件店舗の外部にはYの大きな看板がある一方で、テナント名の表示はなく、内部の案内板にも「ペットショップ」とあるのみであった。さらに、Zは契約場所を大きくはみ出し、階段の踊り場等に商品を陳列し、壁に「大売出し」の紙を貼るなどして営業していた。 レシートの表示や制服の違いなど、一応の区別はなされていたものの、上記の事情、特に売場をはみ出した営業態様は、買物客に対し、Zの店舗があたかもYの営業の一部門であるかのような外観を与えていたといえる。
 したがって、営業主体を誤認しうる外観が存在する。

  (2) また、YはZとのテナント契約において商号使用を禁止していたが、Zが契約場所を大きくはみ出して上記のような営業を行っているのを黙認していた。Yは店舗全体の管理者として是正しうる立場にありながらこれを放置したことは、上記外観の作出・存続について、許諾を与えたのと同視できる程度の帰責性があるといえる。

  (3) そして、XはZからインコを購入しており、上記外観に基づきYを営業主体あるいはZをYの一部門と誤認していたと考えられ、Xに重過失があるといった特段の事情は見当たらない。

  (4) 以上より、会社法9条類推適用が認められる。

4 名板貸人が負う責任は「当該取引によって生じた債務」である。今回のような売買契約に伴う債務不履行による損害賠償債務も、取引関係に基づくものである以上含まれると解される。

5 よって、XはYに対し、会社法9条の類推適用に基づき、Zとの売買契約に基づく債務不履行(民法415条)による損害賠償を請求することができる。

以上

コメント