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参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題13 契約による株式の譲渡制限

目次

【参考答案】

1 問題提起(本件合意の有効性)

2 規範定立(従業員持株制度(譲渡制限契約)と株式譲渡自由の原則・公序良俗)

 3(1) 当てはめ(原則に照らして、本件合意が有効か)

  (2) 当てはめ(本件合意が例外的に株式譲渡自由の原則・公序良俗違反として無効となるか)

4 結論

 

【参考答案】

1 Y株式会社(以下「Y社」という。)の従業員であったXは、Y社との間で、従業員持株制度に基づき取得したY社株式について、退職に際しては取得価額と同額でY社の指定する者に譲渡する旨の合意(以下「本件合意」という。)をしている。
 Xは、本件合意が株式譲渡自由の原則(会社法(以下法令名省略)127条)及び公序良俗(民法90条)に反し無効であると主張し、Y社の株主であることの確認訴訟を提起している。
 そこで、本件合意の有効性が問題となる。

2 株式の譲渡は原則として自由であるが(127条)、当事者間の契約によってこれを制限することも、契約自由の原則から許容される。
 しかし、株式譲渡自由の原則は、株主が投下資本を回収するための重要な手段を保障するものである。したがって、契約による譲渡制限であっても、その内容が株主の投下資本回収の途を著しく阻害するような場合には、会社法127条の趣旨を没却し、公序良俗(民法90条)に反するものとして無効となると解すべきである。
 具体的には、譲渡制限の目的の合理性、譲渡価格の妥当性、配当等の経済的利益の享受の有無などを総合的に考慮して判断する。

 3(1) 前提として、Xは、従業員持株制度制度の趣旨・内容を了解した上で、自由意思に基づき本件合意をし、株主になった以上、原則として有効である。

  (2) では、本件合意が会社法127条の趣旨を没却し、公序良俗(民法90条)に反するものと評価できるか。
 本件従業員持株制度は、従業員の財産形成と会社との一体感の醸成を目的としており、その目的は合理的である。また、退職時に株式の譲渡を義務付けることは、株主を従業員に限定し、制度の目的を維持するために必要かつ合理的な制約といえる。
 そして、Y社は全株式譲渡制限会社であり、その株式には市場がない。そのため、退職時に会社が指定する者に株式を買い取ってもらえる本件合意は、むしろXにとって確実な投下資本回収の機会を保障する側面を有している。
 確かに、本件合意では、譲渡価格が取得価額と同額に固定されており、Xは株式の値上がりによる利益(キャピタル・ゲイン)を得ることはできない。しかし、その反面、株価下落による損失を被るリスクがなく、Y社は2010年度以降、毎年8%から30%という相当率の配当を実施しており、Xは株主として継続的に経済的利益を享受していたと認められる。
 これらの事情を総合すれば、譲渡価格が取得価額に固定されていることをもって、Xの投下資本の回収が著しく阻害されているとまでは評価できない。
 以上より、本件合意は、株式譲渡自由の原則の趣旨や公序良俗に反するものではなく、有効である。

4 よって、本件合意は有効であるため、XはY社に対し、本件合意に基づく株式譲渡義務を負い、XのY社に対する株主としての地位確認請求は認められない。

以上

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