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【参考答案】
1 本件訴えにおいて、被告Yは原告Xの原告適格を争っている。Xは民事訴訟法(以下法令名省略)29条の「法人でない社団」に当たり当事者能力は認められるが、権利能力を有しないため、原則として不動産登記請求権の帰属主体とはなり得ないようにも思える。
そこで、法人でない社団Xが、代表者A個人名義への所有権移転登記手続を求める訴えを提起した場合に、X自身に原告適格が認められるかが問題となる。
2 そもそも、原告適格とは、紛争の解決にとって必要かつ有意義な当事者としての資格をいう。
法人でない社団には権利能力がなく、その不動産は構成員全員の総有に属する。そのため、実体法上の管理処分権を有する構成員全員が原告となる固有必要的共同訴訟となるのが原則である。しかし、構成員が多数に及ぶ場合、全員による訴訟追行を強制することは事実上不可能であり、権利救済を閉ざすことになり妥当でない。また、民事訴訟法29条が法人でない社団に当事者能力を認めた趣旨は、社団が一個の社会実体として活動している実情を重視し、紛争解決の便宜を図る点にある。
そこで、法人でない社団が、その構成員全員に総有的に帰属する不動産について、登記実務上の制約から代表者個人名義への所有権移転登記手続を求める訴えを提起する場合、当該社団自身に原告適格が認められると解する。
3 本件において、Xは構成員が常時500名を超える団体であり、代表者Aの定めがあり、総会の多数決による意思決定方法等の規約が存在する。したがって、Xは、29条の「法人でない社団」に該当する。
そして、Xは、意思決定機関である総会の決議に基づき、Yから土地甲を購入し、代金を支払っている。したがって、土地甲は実体法上、Xの構成員全員の総有に属するが、その購入の経緯や団体としての実態に照らせば、実質的にはX自身が有しているといえる。
また、不動産登記法上、法人でない社団名義の登記は認められておらず、Xが土地甲の対抗要件を備えるためには、便宜上、代表者であるA個人名義の登記によるほかない。
そうすると、本件訴えは、実質的な権利者であるXが、登記実務上の制約から代表者名義とするために提起したものであり、紛争解決のために必要かつ有意義なものといえる。
よって、Xには原告適格が認められる。
4 また、裁判所は、Aの主張事実をすべて認めていることから、XY間の売買契約に基づき、Yは土地甲の所有権移転登記手続をする義務を負う。もっとも、不動産登記法上、法人でない社団名義の登記は認められないため、Xの請求通り、代表者であるA個人名義への移転登記を命じるべきである。
以上より、裁判所は、「被告は、Aに対し、別紙目録記載の土地について、〇年〇月〇日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ」との主文を含む請求認容判決をすべきである。
以上

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