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参考答案 Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第5版〕 問題33 遺産分割と登記

目次

 

【参考答案】

第1 B・CのEに対する甲乙の所有権確認請求について

 1(1) B・CのEに対する甲乙の所有権確認請求が認められるためには、B・Cが甲乙の所有権(民法(以下法令名省略)206条)を有している必要がある。

  (2) 本件において、Aは、2015年7月7日以来、甲及び乙を所有していた。そして、2020年5月5日、Aが死亡した(882条)ことにより相続が開始した後、2020年12月1日相続人B・C・D間で甲乙をB・Cの共有とする遺産分割協議が成立した。「遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって効力を生」(909条本文)じることから、B・Cは、A死亡時である2020年5月5日に甲乙の所有権を取得したといえる。

 2(1) これに対し、Eは、遺産分割前である2020年6月10日にDから持分を譲り受けていることから、909条但書の「第三者」にあたり、遡及効によって権利を害されないと反論することが考えられる。
 そこで、909条但書の「第三者」はいかなる者を指すか、また、第三者保護要件は要求されるか、条文上明らかでなく問題となる。

  (2) この点、909条但書は、遺産分割の遡及効を制限することで、相続により形成された法律関係を基礎として、利害関係を有するに至った第三者を保護することで、取引の安全を確保することにある。
 そこで、当事者及びその包括承継人以外の者で、遺産分割協議前に、相続により形成された法律関係を基礎として新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者をいうと解する。
 もっとも、909条但書の適用により権利を失うおそれのある他の共同相続人の不利益を考慮すると、当該第三者が保護されるためには、第三者として自らができる限りの行動をとるべきである。したがって、第三者保護要件として、当該第三者は権利取得につき登記を備えている必要があると解するのが相当である。

  (3) 本件においてEは、遺産分割協議がなされる前の2020年6月10日に、Dから、Dの相続分となっている甲乙建物の持分を譲り受けているため、909条但書の「第三者」に該当する。
 しかし、本件において、Eは自らが取得した共有持分について、いまだ所有権移転登記を経由していない。
 したがって、Eは登記を備えていない以上、909条但書によって保護されることはない。

3 よって、909条本文のとおり遺産分割の遡及効が貫徹される結果、B・CのEに対する甲乙の所有権確認請求は認められる。

第2 DのFに対する丙建物の所有権確認請求について

 1(1) DのFに対する丙の所有権確認請求が認められるためには、Dが丙の所有権(206条)を有している必要がある。

  (2) 本件において、Aは、2018年3月3日以来、丙を所有していた。そして、2020年5月5日、Aが死亡した(882条)ことにより相続が開始した後、2020年12月1日相続人B・C・D間で、丙をDの単独所有とする遺産分割協議が成立した。「遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって効力を生」(909条本文)じることから、Dは、A死亡時である2020年5月5日に丙の所有権を取得したといえる。

 2(1) Fは、遺産分割教義後である2021年2月15日に、Cから丙の持分4分の1を譲り受けている。すなわち、Fは遺産分割後に登場した第三者であるため、遺産分割前に登場した第三者を対象とする909条但書の適用はない。
 そこで、Dは、899条の2第1項の「第三者」として、対抗要件たる登記を備えていないDは、法定相続分を超える部分について対抗することができないとの対抗要件の抗弁を主張すると考える。
 では、899条の「第三者」とは、どのような者を指すか、条文上明らかでなく問題となる。

  (2) この点、899条の2第1項は、相続による権利の承継のうち法定相続分を超える部分について、第三者の取引安全を図るため、財産法一般における対抗要件主義を適用することを明らかにした規定である。そうだとすれば、同条項における「第三者」の意義についても、不動産物権変動の一般原則である177条の「第三者」と同様に解すべきである。
 そこで、177条の趣旨は、自由競争の枠内にある者の不測の損害を防ぐことにあるため、同条にいう「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいうと解する。
 ここで、単なる悪意者は「第三者」に含まれるが、自由競争の枠を超え、登記の欠缺を主張することが信義則(1条2項)に反すると認められる背信的悪意者は「第三者」に当たらないと解する。

  (3) 本件において、Dの遺産分割による丙建物の単独所有権の取得は、相続開始時に遡って効力を生じる(909条本文)。その結果、Cは初めから丙建物の持分を有していなかったことになり、無権利者Cから持分を譲り受けたFとDとは、そもそも対抗関係に立たないとも思える。しかし、前述の通り、899条の2第1項は、遺産分割後の第三者の取引安全を保護するため、第三者に対する関係においては、分割時に新たな物権変動が生じたのと実質上異ならないものと同視して、対抗問題として処理する趣旨である。
 したがって、Dの遺産分割による所有権の取得と、FのCからの持分譲受による権利取得は対抗関係に立つ。
 そして、本件のFは、遺産分割後にCから丙の持分4分の1を譲り受けており、Dの登記の欠缺を主張して自己の持分取得の有効性を主張する正当な利益を有する者である。また、Fが自由競争の枠を超えた背信的悪意者であることをうかがわせる特段の事情も存在しない。
 したがって、Fは899条の2第1項の「第三者」に該当する。
 そうだとすれば、Dは、遺産分割によって取得した丙の所有権のうち、自己の法定相続分4分の1を超える部分について、対抗要件たる所有権移転登記を備えていない以上、これを第三者であるFに対抗することができない。

3 よって、DのFに対する丙建物の単独所有権の確認請求は、認められない。

以上

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