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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題51 残部請求と信義則違反

目次

 

【参考答案】

 1(1) Xの前訴の訴訟物は、3000万円の損害賠償請求権のうち500万円の支払いを求める明示的一部請求である。

  (2) 金銭債権の数量的一部請求訴訟において、債権の一部であることを明示して請求した場合、訴訟物は当該一部のみに限定されると解される。

  (3) したがって、前訴判決の既判力(民事訴訟法(以下法令名省略)114条1項)は、明示された500万円の部分にのみ生じ、残部である2500万円の部分には及ばないのが原則である。そのため、Xによる後訴の残部請求は、前訴既判力によっては直ちに遮断されない。

 2(1) もっとも、前訴において請求棄却判決が確定している本件において、残部請求を認めることは、実質的な紛争の蒸し返しとなり、妥当でないのではないか。信義則(2条)による遮断の可否が問題となる。

  (2) 金銭債権の数量的一部請求を棄却する旨の判決は、債権の全部について行われた審理の結果に基づいて、当該債権が全く現存しないか、または請求額に満たない額しか現存しないとの判断を示すものである。そして、当該判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは、実質的には前訴で認められなかった請求および主張の蒸し返しであり、被告の紛争解決への合理的期待に反し、二重応訴の負担を強いるものであるから、特段の事情がない限り、信義則に反して許されないと解する。

3 前訴において、裁判所はYの過失の存在を認定できないとしてXの請求を棄却している。この判断は、請求額500万円部分のみならず、債権全体の発生原因事実を否定するものであり、実質的には債権全部について審理判断がなされたといえる。
 したがって、Xがあらためて残部2500万円を請求することは、前訴での敗訴判断の蒸し返しにほかならず、Yに不当な応訴の負担を課すものである。また、Xに再訴を正当化すべき特段の事情もうかがわれない。
 よって、本件後訴の提起は信義則に反し許されず、裁判所は、本件訴えを不適法として却下すべきである。

以上

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