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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題52 既判力の時的限界

目次

 

【参考答案】

1 前訴判決において、Yの土地所有権及び移転登記手続請求権の存在が確定している。これに対し、Xは後訴において、前訴の基準時である口頭弁論終結時より前に存在した詐欺の事実に基づき、基準時後に取消権を行使して、所有権移転登記の抹消を求めている。
 このXの請求は、実質的に前訴判決で確定した権利関係を否定するものであり、既判力の遮断効によって排斥されないか。基準時後に形成権を行使した場合の遮断効の有無が問題となる。

 2(1) 既判力は、基準時における権利関係の存否判断に生じるものであり、当事者は基準時以前に存在した事由をもって、確定判決の効力を争うことはできない。

  (2) もっとも、形成権はその行使によって初めてその効力を生ずることから、形成権行使が基準時後になされた場合、基準時後の事由として遮断効が及ばないとも考えられる。
 しかし、取消権のような形成権は、権利成立の過程に瑕疵がある場合に認められるものであり、請求権そのものに付着する瑕疵といえる。前訴判決によって請求権の存在が確定された以上、それに付着する瑕疵の存在を理由に紛争を蒸し返すことは、紛争解決の実効性を図る既判力制度の趣旨に反する。また、取消しより重大な瑕疵である無効事由が遮断されることとの均衡も考慮すべきである。
 したがって、形成権の発生原因事実が基準時前に存在していた場合には、たとえ行使自体が基準時後であっても、既判力の遮断効が及び、これを行使することは許されないと解する。

3 本件では、Xが主張する取消権の発生原因であるYによる詐欺の事実は、前訴の口頭弁論終結時より前に存在していたものである。そうであれば、Xは前訴において取消権を行使して抗弁することが可能であったといえ、基準時後に取消しの意思表示をしたとしても、これは基準時前の事由に基づき前訴の判断を蒸し返すものに他ならない。
 したがって、Xの取消権の主張は、既判力の遮断効によって排斥される。

4 よって、裁判所はXの請求を棄却すべきである。

以上

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