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参考答案 Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第5版〕 問題13 「法律行為の基礎とした事情」と錯誤

目次

 

 

【関係図】

問題13基礎事情錯誤(民法95条1項2号)が問われる事案の相関図。売主Y・買主X間の美術品の売買で、買主が目的物の価値について錯誤に陥っている関係を示している。

 

【答案構成】

1(1) kg(請求原因):民法121条の2第1項に基づく原状回復請求権としての売買代金180万円の返還請求権+規範定立(要件①・②・③)

 (2) 当てはめ(要件①・②)

 (3) 要件③についての問題提起

2(1) 要件③の取消原因=基礎事情錯誤

 (2) 規範定立(要件(ⅰ)~(ⅳ))

 (3)ア 要件(ⅰ)当てはめ

イ(ア) 要件(ⅱ)規範定立(「事情が法律行為の基礎とされていることが表示」の意義) 

 (イ) 要件(ⅱ)当てはめ

  ウ(ア) 要件(ⅲ)規範定立(錯誤の重要性)

   (イ) 要件(ⅲ)当てはめ

  エ 要件(ⅳ)について

3(1) E(抗弁):重過失の抗弁(95条3項柱書)

 (2) 「重大な過失」当てはめ

 (3) R(再抗弁):錯誤につき相手方の[悪意/重過失]or共通錯誤

4 結論

 

【参考答案】

1(1) Xは、Yに対し、民法(以下、法令名省略)121条の2第1項に基づく原状回復請求権としての売買代金180万円の返還請求権を行使すると考える。
 その要件は、①売買契約(555条)の成立、②①に基づく売買代金給付、③①の取消原因である。

(2) 本件では、2022年4月における本件売買について契約締結されており(①充足)、本件売買に基づき、締結3日後に代金180万円を支払っている(②充足)。

(3) そこで、上記Xの売買代金支払債務履行が「無効な行為に基づく」ものであったといえるか、売買契約の取消原因の有無(要件③)が問題となる。

2(1) Xは、要件③として、基礎事情錯誤(95条1項2号)を取消原因として、本件売買が遡及的無効となる(121条)結果、「無効な行為に基づく」(121条の2第1項)代金給付となると主張すると考える。

(2) 基礎事情錯誤の要件は、(ⅰ)「表意者が法律行為の基礎とした事情についてその認識が真実に反する錯誤」があること、(ⅱ)(ⅰ)の「事情が法律行為の基礎とされていることが表示」されたこと、(ⅲ)(ⅰ)の「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要」であること、(ⅳ)相手方に対する取消しの意思表示である。

(3)ア Xは、「水仙」が真作であり、200万円前後の価値があるとの主観的認識を基礎として本件売買の意思表示をしたところ、実際は「水仙」は贋作であり、20万円以下の価値しかなかったのであるから、「認識が真実に反」する錯誤があったといえる((ⅰ)充足)。

イ(ア) 「事情が法律行為の基礎とされていることが表示」されていたことが要求される趣旨は取引の相手方保護にあるから、法律行為の基礎とした事情が相手方に明示又は黙示に表示され、相手方に了承されて法律行為の内容となったことを意味すると解する。

(イ) 本件では、XがYに「水仙」について尋ねたところ、Mの筆によるものであり、名高い美術品愛好家の家から出たものであるから間違いない物だと説明を受けている。この説明は、「水仙」が真作であることを前提とする内容である。また、その売買代金も180万円と真作であることが前提となる価格である。このような経緯に照らすと、本件売買は、黙示的に真作である「水仙」の売買契約であることが表示され、Yもそのことを了承して締結に至ったと解されるから、要件(ⅱ)を充足する。

ウ(ア) 「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである」とは、表意者保護と相手方保護の調和を図る観点から、通常一般人において、当該錯誤がなければ意思表示をしなかったといえる場合をいう。

(イ) 通常一般人であれば、20万円以下の価値しかない目的物を180万円で購入するとは考えられないから、「水仙」が真作であるとの錯誤がなければ本件売買の意思表示をしなかったといえる。
 したがって、要件(ⅲ)を充足する。

エ これまでのXの主張は、Yに対する原状回復請求権の主張としてなされるものであるから、相手方に対する取消しの意思表示も認められる((ⅳ)充足)。

3(1) これに対し、Yは、本件「錯誤」が「表意者」Xの「重大な過失によるものであった場合」に該当し、95条1項による意思表示の取消しは認められない(95条3項柱書)との抗弁を主張すると考える。

(2) Xは、美術品の販売業を営む者であるから、美術品の購入に際しては、相応の注意を尽くすべきであったといえる。
 しかし、Xの取引経験は約2年と浅いのに対し、Yは約10年もの経験を有しており、しかも、両者は1年半前から知り合いとして以前にも取引をしたことがあった。 このような事情を踏まえると、経験豊富で過去にも取引のあるYが「水仙」は真作であると説明したことに対し、Xがその言葉を信頼したことはやむを得ないといえる。

  したがって、「重大な過失」があるとはいえない。

(3) 仮に、Xに「重大な過失」が認められるとしても、美術商であるXが贋作を真作の値段で購入するとは考えられないから「相手方」Yが「表意者」Xの錯誤を知っていたか(95条3項1号)または、XYの双方が「水仙」を真作であるとの同一錯誤に陥っていた(95条3項2号)場合に該当する。
 そのため、95条3項の抗弁は認められない。

4 以上より、XのYに対する目的物返還と引換えとする代金180万円の返還請求は認められる。

以上

 

 

【悩みどころ】

・ 3(2)の当てはめにおいて、重過失ありなのではないかと考えたが、取引経験の事情が拾えないことになってしまう。同事情は、重過失を否定する事情と考えられたため、重大な過失を否定した。

・ 上記の理由から、重大な過失を否定すると、95条3項但書の再抗弁が答案上表れないことになる。そうすると、配点があった場合に落とすことになるため、「仮に~」として、配点を拾えるよう記載した。

 

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