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参考答案 Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第5版〕 問題30 取得時効と登記①

目次

 

【参考答案】

第1 BのDに対する本訴請求について

 1(1) BはDに対し、土地αがBに帰属することの確認、および所有権(民法(以下法令名省略)206条)に基づく物権的妨害排除請求権としての所有権移転登記手続を請求している。

  (2) 上記請求の要件は、① Bが土地αの所有権を有していること、② 土地α上にD名義の登記が存在することである。

  (3) 本件において、土地αにD名義登記が存在することは、問題文上、明らかである(要件②充足)。そこで、Bが土地αの所有権を取得したといえるかが争点となる。

 2(1) Bは、要件①の所有権取得原因として、2002年1月27日から20年間の占有を理由とする長期取得時効(162条1項)の完成を主張する。
 ここで、土地αは本来Bが買い受けた土地であるところ、同条項は「他人の物」と規定しているため、自己の物についても時効取得が認められるかが問題となる。

   (2)ア 取得時効制度の趣旨は、永続した事実関係を尊重し、実体法上の権利関係に高め、また、真実の権利関係の立証の困難性を救済する点にある。
 そうだとすれば、かかる趣旨を満たす限り自己物と他人物を区別する必要はない。また、条文上「他人の物」と規定されているのは、通常は自己の物について取得時効を援用することが無意味であることを念頭に置いた例示にすぎない。
 したがって、自己物であっても時効取得は認められると解する。

    イ そこで、長期取得時効の要件は、(ⅰ) 物の占有開始時点、(ⅱ) (ⅰ)の時点から20年経過時点での占有、(ⅲ) 時効援用(145条)の意思表示となる。
 なお、「所有の意思」、「平穏」、「公然」(186条1項)及び「占有の継続」(186条2項)は法律上推定されるため、時効取得を主張する側が自ら主張・立証する必要はない。

  (3) Bは、2002年1月27日にAから土地αの引渡しを受けており、同日に占有を開始したことが認められる(要件(ⅰ))。また、Bはその後、土地αの上に建物βを建築するなどして現在まで利用しており、占有開始から20年が経過した2022年1月27日時点においても、土地αを占有している(要件(ⅱ))。
 そして、Bは2022年2月15日、Dに対して時効取得を主張して本件訴えを提起しており、これをもって時効援用の意思表示(要件(ⅲ))をしたといえる。
 したがって、Bは2022年1月27日の経過により、土地αにつき、所有権を時効取得したといえ、要件①を充足する。

 3(1) これに対し、Dは、Bの時効取得は、登記を経ていないことから、「第三者」(177条)であるDに対抗できないとの対抗要件の抗弁を主張すると考える。
 そこで、時効完成「前」に目的物を譲り受けた者が、177条の「第三者」に当たるかが問題となる。

  (2) そもそも、177条の適用関係にあるといえるためには、当事者が物権変動をめぐる対抗関係にあることを要する。
 しかし、時効取得の効果は占有開始時に遡及する(144条)ため、時効完成時の占有者は、その時点における原権利者から直接権利を取得した状態となり、当事者に類似する関係に当たる。
 したがって、時効完成前に不動産を譲り受けて登記を備えた者は、時効取得者との関係では当事者に準じる地位にあり、対抗関係に立たないため、177条の「第三者」には当たらないと解する。

  (3) 本件において、Bの取得時効が完成したのは、2022年1月27日である。
 一方、DがCから代物弁済により、土地αの所有権移転登記を経たのは2021年12月20日である。したがって、Dは、時効完成前の第三者にあたる。
 よって、Bは登記なくしてDに時効取得を対抗でき、Dの抗弁は認められない。

4 以上より、Bは土地αの所有権をDに対抗できるため、Bの請求は認められる。

第2 DのBに対する反訴請求について

 1(1) Dは、Bに対し、所有権(206条)に基づく物権的返還請求権として、建物βの収去および土地αの明渡しを請求している。

  (2) 物権的返還請求権の要件として、D所有が必要となるところ、第1で検討したとおり、Bは2022年1月27日の経過をもって土地αの所有権を時効取得しており、これを登記なくしてDに対抗することができる。
 そして、取得時効の効力は、占有開始時である2002年1月27日に遡って生じる(144条)。その結果、Dは初めから土地αの所有権を取得しなかったことになり、Dの所有権は認められない。

  (3) よって、Dの明渡請求は認められない。

 2(1) Dは、Bに対し、不当利得返還請求権(703条)として、Dが登記を備えた2021年12月20日以降の賃料相当損害金の支払を請求すると考えられる。

  (2) 不当利得返還請求権の要件として、「法律上の原因なく」利益を得たことが必要となるところ、前述のとおり、Bは土地αを時効取得しており、その効力は占有を開始した2002年1月27日に遡及する(144条)。
 そうだとすれば、Bは占有開始時から正当な所有権者として土地αを使用していたことになるため、Bの占有による利益は所有権に基づくものであり、「法律上の原因」が認められる。

  (3) したがって、Bが「法律上の原因なく」利益を得たとはいえないため、Dの不当利得返還請求は認められない。

以上

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