スポンサーリンク

参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題2 裁判所の審判権

目次

 

【参考答案】

1 宗教法人山和寺(代表者B)のAに対する、山和寺の境内地の明渡しを求める訴え(以下「本訴」という。)およびAの宗教法人山和寺に対する、Aが山和寺の住職の地位にあることの確認訴訟(以下「反訴」という。)につき、裁判所は本案判決をすることができるか。
 裁判所が本案判決をするためには、当該訴訟が裁判所法3条の「法律上の争訟」に該当する必要があるところ、「法律上の争訟」とは、いかなる争訟を指すか、その意義が条文上明らか出なく問題となる。

2 「法律上の争訟」とは、①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関するものであり、かつ、②それが法令の適用により終局的に解決することができるものをいう。
 具体的に、②は、紛争の実態ないし核心が宗教上の争いであって、前提問題として宗教上の教義に関する判断が不可欠な場合には、その実質において法令の適用による終局的な解決が不可能なものに当たると解する。

 3(1) まず、Aの反訴について、住職の地位とは、一般に寺院の葬儀や法要等の仏事を掌り、教義を宣布するなどの宗教的活動の主宰者としての地位にとどまり、世俗的な法律上の地位には当たらない。
 確かに、山和寺の規則上、住職であることが代表役員としての要件とされており、住職の地位が世俗上の法律関係の基礎となっている事情はある。しかし、このような関係がある場合であっても、確認対象は代表役員の地位とすべきであり、住職の地位について確認請求を認める根拠とはなり得ない。
 したがって、本件反訴は単なる宗教上の地位の確認を求める訴えであり、①当事者間の具体的な権利義務に関する紛争とはいえず、「法律上の争訟」に当たらない。よって、裁判所は本案判決をすることができず、反訴を不適法として却下すべきである。

  (2) 次に、本件本訴の訴訟物は、山和寺のAに対する、所有権(民法206条)に基づく境内地の明渡請求権であり、具体的な権利義務に関する紛争であるため、要件①を充足する。
 山和寺は、明渡請求の根拠として、Aに対する擯斥処分を主張する。しかし、擯斥処分の有効性を判断するためには、Aの行為が「教義に異議を唱えて宗門の秩序を乱した」か否かの判断が必要となる。そして、恵信宗の教義は「釈尊恵信の法門を伝承した開祖大和禅師一流の禅愛一如」という純然たる宗教上の内容であるため、裁判所が、Aの僧侶養成通信講座の講師就任が教義に反するか否かを判断することは、必然的に恵信宗の教義の解釈に介入し、国家権力をもってその内容を確定することになり許されない。
 したがって、本件本訴は実質的にみて法令の適用によって解決し得るものとはいえず(要件②不充足)、「法律上の争訟」に当たらない。
 よって、裁判所は本訴についても本案判決をすることができず、訴えを却下すべきである。

 4(1) 上記の通り、本訴を不適法却下すると、本件境内地はAが占有を継続することになる。その結果、正当な手続により任命された新住職Bが活動できず、原告に自力救済を強いることになりかねない。
 そこで、このような事態を回避すべく、裁判所が本案判決をする場合、原告の請求原因事実の証明がないものとして、本訴につき請求棄却の判決をすることになると考える。

  (2) 本件において、恵信宗の規程には、懲戒処分として、教義に異議を唱えた場合の擯斥処分のほかに、宗制に反してはなはだしく宗派の秩序を乱した場合の剝職処分が規定されている。剝職処分であれば、内部的な組織運営の規則を問題として純然たる教義の解釈を含まずに、世俗的な事実関係のみで判断することが可能であったと考えられる。
 にもかかわらず、山和寺は、あえて裁判所が判断できない宗教的事項である教義違反を要件とする擯斥処分を選択し、これを本訴請求の根拠とした以上、原告である山和寺は、裁判所が判断可能な世俗的要件を自らの責任で用意しなかったということであり、自己の請求を基礎づける事実についての主張・立証責任を尽くしていないものと同視すべきである。
 よって、裁判所が本案判決をする場合には、原告が主張・立証責任を負う請求原因事実の証明がないものとして、本訴につき請求棄却の判決をすべきとなる。

以上

コメント