目次
【答案構成】
1 Aの反論1(DのAに対する花瓶の代金支払請求=AD間花瓶の売買契約に基づく請求。→本件売買契約はBが無権限で締結したものであり、Aにその効果は帰属しない。)
2(1) 代理の要件(①顕名、②代理行為、③②に先立つ代理権授与(99条1項))
(2) 当てはめ(BはD百貨店の担当者に対し、Aの名で契約書を作成=本人Aのためにすることを示している(①顕名)。BはDとの間で花瓶の売買契約を締結している(②代理行為)。
⇔AはBから「あなたが買ったことにしてくれないか」との依頼を一度は断っている+その後の電話でも曖昧な返答に終始。→本件売買契約締結に関する③代理権授与と認めることはできない。)
(3) 小結論(本件売買契約の締結は、無権代理行為(113条1項)に当たる。→AはDからの請求に対し、Bに請求するよう告げており、本件売買契約を追認していない(115条)。→本件売買契約の効果はAに帰属せず、AはDに対し代金支払義務を負わない。)
3(1) Dの再反論(表見代理の成立。⇔109条1項が直接適用されるのは、本人が「他人に代理権を与えた旨を表示」し、第三者がその他人を「代理人」であると信頼した場合。
→本件において、Bは「A本人」として振る舞っており、Dの担当者もBを「A本人」であると誤信。→第三者の信頼は「代理権の存在」ではなく、表示された名義人と行為者との同一性に向けられている→109条1項の直接適用不可。)
問題提起(Dの再反論として109条1項類推適用の主張が認められるか。)
(2) 規範定立(109条1項類推適用)
(3) 当てはめ:要件(ⅰ)(Aは、Bの電話での申し出に対し、曖昧な返答に終始したにすぎない=Bによる自己の名義使用を積極的に許諾したものとはいえない。+AがBに印鑑や身分証明書を貸与するなど、BをA本人と誤信するような外観の作出に積極的に寄与した事実不存在。→Aの消極的な態度のみをもって、(ⅰ)外観作出の帰責性は認められない。
当てはめ:要件(ⅲ)(D担当者は、Bが「Aの住所や電話番号を何もみずにすらすらと記入した」というだけでBをA本人であると軽信。本件売買契約は8万円と高額+対面→運転免許証の提示を求めるなど、契約相手方が名義人本人であるかを確認すべき義務あり。→Dはこれを怠った=過失あり。)
(4) 小結論(109条1項類推適用は、要件(ⅰ)・(ⅲ)を欠き、認められない。)
4 結論
【参考答案】
1 DのAに対する花瓶の代金支払請求は、AD間における花瓶の売買契約(民法(以下法令名省略)555条)に基づくものである。そこで、Aは、本件売買契約はBが無権限で締結したものであり、Aにその効果は帰属しないと反論することが考えられる。
2(1) 本件売買契約は、BがAの名義で行ったものである。これが代理行為としてAに効果が帰属するためには、①顕名、②代理行為、③②に先立つ代理権授与(99条1項)が要件となる。
(2) BはD百貨店の担当者に対し、Aの名で契約書を作成しており、本人のAのためにすることを示している(①顕名)。また、BはDとの間で花瓶の売買契約を締結している(②代理行為)。
しかし、AはBから「あなたが買ったことにしてくれないか」との依頼を一度は断っており、その後の電話でも曖昧な返答に終始している。これをAがBに対し本件売買契約の締結に関する代理権を授与した(③代理権授与)と認めることはできない。
(3) したがって、Bの行った本件売買契約の締結は、代理権のない者がした無権代理行為(113条1項)に当たる。そして、AはDからの請求に対し、Bに請求するよう告げており、本件売買契約を追認していない(115条)。
よって、原則として、本件売買契約の効果はAに帰属せず、AはDに対し代金支払義務を負わない。
3(1) Dは、Aの責任を追及するため、表見代理の成立を主張することが考えられる。しかし、109条1項が直接適用されるのは、本人が「他人に代理権を与えた旨を表示」し、第三者がその他人を「代理人」であると信頼した場合である。
本件において、Bは「Aの代理人B」としてではなく、「A本人」として振る舞っており、Dの担当者もBを「A本人」であると誤信している。このように、第三者の信頼が「代理権の存在」ではなく、表示された名義人と行為者との同一性に向けられている点で、109条1項を直接適用することはできない。
そこで、Dの再反論として109条1項類推適用の主張が認められるか。
(2) 109条1項の趣旨は、本人の帰責性により虚偽の外観を作出した場合に、本人の犠牲のもと、外観を信頼した第三者を保護する権利外観法理にある。
したがって、(ⅰ)虚偽の外観作出に対する本人の帰責性が認められ、(ⅱ)相手方がその外観を信頼し、(ⅲ)その誤信につき善意・無過失である場合には、109条1項の類推適用により、本人はその取引について責任を負うものと解される。
(3) 本件においてAは、Bの電話での申し出に対し、曖昧な返答に終始したにすぎない。これは、Bによる自己の名義使用を積極的に許諾したものとはいえない。
また、AがBに印鑑や身分証明書を貸与するなど、DがBをA本人と誤信するような外観の作出に積極的に寄与した事実も認められない。したがって、Aのこのような消極的な態度のみをもって、(ⅰ)外観作出の帰責性は認められない。
加えて、相手方であるDの担当者は、Bが「Aの住所や電話番号を何もみずにすらすらと記入した」というだけでBをA本人であると軽信している。本件売買契約は8万円と高額なものであり、対面で契約を締結する百貨店の担当者としては、運転免許証の提示を求めるなどして、契約の相手方が名義人本人であるかを確認すべき基本的な本人確認義務があったといえる。Dはこれを怠ったのであるから、BをA本人であると誤信したことについて、過失があったと認められる。
(4) 以上より、109条1項類推適用は、要件(ⅰ)・(ⅲ)を欠き、認められない。
4 これらの反論により、AはDの代金支払請求を拒むことができる。
以上

コメント