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【参考答案】
1 Yは、Xにより所有権に基づく物権的返還請求権としての建物収去・土地明渡請求に対し、甲土地の賃借権を時効取得した(民法(以下法令名省略)163条、162条1項)として、占有正権原の抗弁を主張することが考えられる。
そこで、賃借権は債権であることから、「財産権」(163条)として時効取得が認められるかが問題となる。
2 確かに、一般論としては、債権は占有を要素とせず、一回的給付を目的とするため権利行使の継続性が認められず、「財産権」(163条)に当たらない。
しかし、不動産賃借権は占有を要素とし、権利行使の継続が予定されているから、不動産賃借権は「財産権」に当たり、時効取得も認められる。
具体的には、①土地の継続的な用益という外形的な事実が存在し、かつ、②それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されている場合において、163条の要件を充足する場合には、不動産賃借権の時効取得が認められると解する。
3(1) Yは、2002年4月1日にAとの賃貸借契約に基づいて甲土地の引渡しを受け、乙建物を建てた時点において、占有を開始している。そして、2024年10月1日にXから訴えられるまでの間、「22年」以上にわたって継続して甲土地を占有・利用し続けてきたことが推定される(186条2項)。また、推定を覆す事情は存在しない。
そのため、①土地の継続的な用益という外形的な事実と「20年間」の占有が認められる。
(2) 次に、Yは、Aとの間で賃貸借契約を締結し、当該契約に基づきAに対して、供託による部分も含めて賃料を継続的に支払ってきた。また、Yは、甲土地上にY名義で保存登記がされた乙建物を所有している。かかる賃料の支払いや建物所有による土地利用は、②「賃借の意思に基づく」ものであり、それが「客観的に表現されている」といえる。
確かに、Aは甲土地につき何ら権原を有しない者であるが、YはAとの契約に基づきAに賃料を支払うのが通常であり、Yが認識していないXへの表現まで要するとすれば、事実上、他人物賃貸の場合には賃借権の時効取得は認められないことになり、確定した判例の趣旨を没却することになる。
したがって、賃貸人とされる者に対する関係で賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていることで足りると解する。
(3) また、Yの占有は平穏かつ公然であったものと推定され(186条1項)、この推定を覆す事情は存在しない。そして、Yが本訴訟において賃借権の時効取得を主張することは、時効の援用(145条)に他ならない。
4 以上より、Yには、甲土地の賃借権の時効取得が認められ、この賃借権が甲土地占有の正権原となることから、Yの反論が認められ、Xの建物収去・土地明渡請求は棄却されるべきである。
以上

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