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【参考答案】
1(1) X社は、Y社に対し、本件約束手形裏書人としての手形上の責任(手形法43条前段、77条1項4号)を遡及する。もっとも、Y社の福岡支店長代理Aは手形行為の権限を与えられていないことから、本件約束手形の裏書行為は無権代理となり、原則としてY社は手形金支払義務を負わない。
そこで、X社は、Aが「表見支配人」(会社法(以下法令名省略)13条)に当たるとして、Y社に責任を遡及できないか。
(2) 13条の要件は、①「本店又は支店」であること、②「使用人」であること、③「事業の主任者であることを示す名称」を付与していること、④「相手方」の善意である。
2(1) まず、①「本店又は支店」の意義について、13条の趣旨は事業の主任者たる名称に対する信頼の保護にある一方、営業所としての実質を備えていない場所に主任者がいるとは限らないから、その場合にまで同条による保護を認めるのは行き過ぎである。
そこで、「支店」とは、単に名称が付されているだけでなく、一定の範囲内での業務決定権限と組織的実体を備え、営業所としての実質を有していることが必要であると解する。
(2) Y社福岡支店は、従業員が1名に減少しているものの、本店とは独立して工事の受注や小切手の振出しを行っている。したがって、対外的な業務活動を行う組織的実体があり、営業所としての実質を備えているといえる(要件①充足)。
3(1) 次に、②「使用人」の意義について、13条が「使用人」と規定していることから、会社との雇用関係が必要とも思われるが、同条の趣旨からして、雇用契約の有無を厳格に要求すべきではない。
そこで、会社との間で事実上の指揮監督関係があれば足りると解すべきである。
(2) AはY社と直接の雇用関係にはなく、独立の商人として活動していた側面がある。
しかし、AはY社福岡支店長から権限の委任を受け、支店に常駐して業務一切を処理しており、Y社の組織に組み込まれていたといえる。したがって、事実上の指揮監督関係が認められ、「使用人」に準じて扱いうる(要件②充足)。
4(1) また、③「事業の主任者であることを示す名称」の意義について、同要件は、営業所の事業の責任者であるという外観の存在を意味するものであるから、当該名称は、その営業所の総括的な主任者であることを示すものであることを要する。
なお、名称の付与については、明示のみならず黙示の許諾でも足りるが、会社による使用の認識が必要である。
(2) Aの正式な肩書は「支店長代理」であったが、Aは「福岡支店長」名義で業務を行っていた。また、Y社支店長は、Aに業務一切を任せていたことから、Aが支店長名義を使用することを黙認していたといえる。したがって、名称の付与があったといえる(要件③充足)。
5(1) 13条の適用には、「相手方」が善意であることが必要であるが、ここでの「相手方」に手形の第三取得者が含まれるかが問題となる。
そこで、13条の趣旨に鑑みると、名称への信頼は直接取引をした相手方において生じるものである。また、手形行為の無権代理については別途手形法上の法理によるべきである。
したがって、「相手方」とは、名称に対する信頼を抱いて取引をした直接の相手方に限られ、手形取得者のような第三者は含まれないと解する。
(2) 本件で、Aから直接裏書を受けたのはC社であり、X社はC社からさらに裏書譲渡を受けた第三取得者である。したがって、X社は13条の「相手方」には当たらない。よって、要件④を充足しない。
6 以上より、X社は「相手方」に当たらないため、会社法13条によりY社に責任を遡及することはできない。よって、X社の請求は認められない。
以上

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