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参考答案 Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第5版〕 問題26 保証と時効

目次

 

【参考答案】

第1 小問(1)について

 1(1) AのCに対する請求は、保証契約(民法(以下、法令名省略)446条1項)に基づく保証債務履行請求としての100万円の返還請求をすると考えられる。

  (2) その要件は、①主たる債務の発生原因事実、②保証契約の締結、③②が書面によること(446条2項)である。

  (3) 本件において、AはBとの間で100万円の金銭消費貸借契約を締結している(要件①充足)。そして、Cは書面によって(要件③)、Aとの間で連帯保証契約を締結している(要件②)。したがって、AのCに対する請求原因は認められる。

 2(1) これに対し、Cは、主たる債務である本件貸付金債権につき、消滅時効の抗弁を主張し、付従性により連帯保証債務も消滅すると主張して、請求を拒むことが考えられる。

  (2) Aは、1年後の2021年4月を弁済期として100万円を貸し付けている。そのため、弁済期の到来と同時に権利を行使することができると知っていたといえるから、5年後の2026年4月の経過により消滅時効が完成する。本件では、Aが提訴した時点で既に弁済期から6年以上が経過しており、時効期間を経過している。
 また、「保証人」であるCは、本件貸金返還請求権の消滅時効を「援用」できる「当事者」に当たる(145条)。
 したがって、本件貸金返還請求権は、援用により消滅時効(166条1項1号)が完成する。

 3(1) これに対し、Aは、C弁済期から3年後の2024年4月に支払猶予を求めた事実を捉え、これが債務の「承認」(152条1項)にあたり、時効が更新されたとの再抗弁を主張することが考えられる。

  (2) 確かに、Cの支払猶予の要求は、債務の存在を前提とする観念の通知であり、「承認」(152条1項)に当たる。
 しかし、時効更新の効力を生じさせる承認は、権利の保存・利用行為としての性質を有するため、承認をする者は、権利の処分能力までは要しないとしても(同条2項)、当該権利についての管理能力または管理権限を有することを要する。
 保証人は、主たる債務とは別個独立の債務を負担する者であり、主たる債務の当事者ではないから、主たる債務について管理権限を有しない。したがって、保証人は主たる債務を有効に承認し得ない。したがって、本件におけるCの行為は、自己の連帯保証債務の承認としての効力を有するにとどまり、主たる債務の時効を更新する効力は生じない。
 また、連帯保証人について生じた事由は、履行の請求等を除き、主たる債務者にはその効力を及ぼさないのが原則である(458条、440条)。そのため、主たる債務者Bの時効の進行には影響しない。

  (3) したがって、主たる債務は2026年4月の経過をもって時効消滅している。

4 以上より、Cは主たる債務の消滅時効を援用して、その付従性により連帯保証債務の消滅を主張することができるため、Aの請求は認められない。

第2 小問(2)について

 1(1) AのCに対する保証債務履行請求権の発生原因事実は、小問(1)と同様に認められる。

  (2) これに対し、Cは、主たる債務の消滅時効(166条1項1号)を援用し、付従性により連帯保証債務も消滅したとして、Aの請求を拒むことが考えられる。

  (3) 本件貸付金債権の弁済期は2021年4月であり、2028年4月の時点では既に消滅時効期間である5年が経過している。また、Cは「保証人」として主たる債務の時効を援用することができる(145条)。

 2(1) もっとも、Cは時効完成後の2028年4月に支払猶予を求めている。そこで、この時効完成後の債務承認により、信義則(1条2項)上、以後の時効援用権を喪失するのではないかが問題となる。

  (2) 確かに、時効完成後に債務承認行為をした場合、債権者の信頼を保護するため、信義則上、当該債務の消滅時効を援用することは許されな意のが原則である。
 もっとも、保証債務は主たる債務とは別個独立の債務であるから、保証債務の承認が直ちに主たる債務の時効利益の放棄、あるいは主たる債務の時効援用権の喪失を意味するものではない。したがって、保証人が時効完成後に保証債務を承認した場合であっても、主たる債務の時効が完成しているか否かにかかわらず、あえて保証債務を履行する趣旨で主たる債務の時効利益を放棄したと認められるような特段の事情がない限り、保証人は、主たる債務の時効を援用して保証債務の付従性による消滅を主張することは信義則に反しないと解すべきである。

  (3) 本件において、Cは本件貸付金債権の時効完成を知らず、Aに対して支払猶予を求めている。これは、証債務の承認には当たるものの、Cにおいて、主たる債務が時効消滅していたとしてもなお保証債務を履行する意思を有していたといった特段の事情は認められない。したがって、Cがその後改めて主たる債務の消滅時効を援用することは、信義則に反するとはいえない。

3 よって、Cによる主たる債務の消滅時効の援用は認められ、付従性により連帯保証債務も消滅するため、Aの請求は認められない。

第3 小問(3)について

1 Cは、Bからの委託を受けた連帯保証人として、Aに対して弁済を行った。そのため、CはBに対し、その出捐額について求償権を行使することが考えられる(459条1項)。

 2(1) これに対し、Bは、Cが弁済に先立ってBに対する事前通知を怠ったことを理由に、本件貸付金債権の消滅時効をもってCに対抗し、求償に応じないと反論することが考えられる。

  (2) 本件において、Cは弁済に先立ちBへの事前通知を行っていない。
 他方、Bの本件貸付金債権については、弁済期から7年が経過しており、既に消滅時効が完成していた。そうすると、Bは、Aから請求があれば時効を援用して支払いを拒絶することができたといえる。
 したがって、Bは、Aに対抗し得た「消滅時効の完成」という事由をもって、事前通知を怠ったCに対抗することができる(463条1項)。

3 よって、Bの抗弁が認められ、Cの求償請求は認められない。

以上

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