参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題59 訴えの変更

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【参考答案】

 1(1) Xは、当初の甲家屋引渡等の請求を、履行不能による損害賠償請求に変更しようとしている。これが民事訴訟法(以下法令名省略)143条1項の訴えの変更として認められるか。

  (2) 訴えの変更が認められるためには、①「請求の基礎に変更がないこと」(143条1項柱書)、②「著しく訴訟手続を遅滞させないこと」(同条項但書)、③「口頭弁論の終結まで」になされること(143条1項本文)、④「同種の訴訟手続」によること、⑤「書面」によること(143条2項)が必要である。

 2(1) 「請求の基礎」の同一性の趣旨は、防御目標が予想外に変更されることによる被告の不利益に配慮することにある。
 そこで、「請求の基礎に変更がない」とは、(ⅰ)旧請求と新請求の間に、利益紛争の実態が共通しているという実体法的関連性及び(ⅱ)旧請求の審理資料を新請求の審理に利用できるという手続法的関連性が認められる場合を意味すると解する。

  (2) 本問において、旧請求である引渡請求と新請求である損害賠償請求は、いずれもX・Y間の同一の売買契約を基礎としており、実体法的関連性が高い。
 また、争点整理の結果、既に「契約の有効性」が共通の争点として抽出されており、旧請求での審理資料をそのまま新請求に流用できるため、手続法的関連性も認められる。したがって、①請求の基礎の同一性が認められる。

 3(1) 要件②につき、訴えの変更がなされたのは、争点整理終了後ではあるが証拠調べの前である。旧請求において既に売買契約の有効性が争点として確認されており、新請求である損害賠償請求においても、その前提となる売買契約の成否および有効性が主要な審理対象となる。したがって、これまでの審理結果をそのまま新請求に活用することが可能であり、新たな証拠調べを必要とする範囲も限定的である。むしろ、本件手続内で一挙に解決を図ることは、別訴を提起させて二度手間となることを避ける意味で、訴訟経済に資するといえる。よって、本件訴えの変更が著しく訴訟手続を遅滞させるとはいえない。

  (2) 本件訴えの変更は証拠調べの前になされており、「口頭弁論の終結前」(143条1項)の申立てである(要件③充足)。
 また、旧請求と新請求はいずれも通常の民事訴訟手続により審理されるものであるから、「同種の訴訟手続」(136条、143条1項)によるものである(要件④充足)。
 そして、Xは訴えの変更を書面で行った(143条2項)とされており、方式の要件⑤も充たしている。

  (3) 以上より、Xの訴えの変更はすべての要件を充足し、適法である。

 4(1) Xの申し立てた訴えの変更は、旧請求に代えて新請求を定立する訴えの交換的変更である。この法的性質をいかに解すべきか。

  (2) 訴えの交換的変更の法的性質は、新請求の追加的変更と旧請求の取下げとが結合したものであると解する。
 なぜなら、被告が応訴した後に、原告の一方的な変更によって旧請求の訴訟係属が当然に消滅するとすれば、被告が旧請求について本案判決を得て紛争を解決するという訴訟上の地位が害されることになるからである。

  (3) 被告Yは争点整理の結果、契約の有効性について争っており、本案について準備書面を提出し、又は口頭弁論をしたものといえる。そのため、旧請求の取下げが効力を生じるには、被告Yの同意が必要となる(261条2項)。したがって、被告Yが本件訴えの変更に同意した場合には、旧請求の訴訟係属は取下げによって消滅する。この場合、裁判所は新請求についてのみ審理・判決すれば足りる。
 これに対し、被告Yが同意を拒絶した場合には、旧請求の取下げは効力を生じない。この場合、訴えの変更は実質的に追加的変更として扱われることになり、新旧両請求が併合された状態となる。裁判所は、新請求について審理を行うとともに、旧請求については、既に目的物が焼失し履行不能となっていることを踏まえ、請求棄却判決を下すべきである。

5 以上より、Xによる訴えの変更は認められ、裁判所は旧請求について、Yの同意があれば訴訟係属の消滅として扱い、同意がなければ請求棄却判決を下すべきである。

以上

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