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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題56 訴え取下げと再訴の禁止

目次

 

【参考答案】

1 本件再訴は、前訴の第1審勝訴判決後に訴えが取り下げられた後に提起されたものであることから、民事訴訟法(以下、法令名省略)262条2項により禁止される「同一の訴え」として、不適法却下されるべきではないか。
 同条項は、「本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない」と規定しており、本件においてXは第1審で請求認容判決を得た後に控訴審で訴えを取り下げている(261条1項)ため、形式的には同条項の要件に該当するようにも思える。そこで、「同一の訴え」の意義が問題となる。

2 262条2項の趣旨は、判決後の取下げにより裁判所のそれまでの審理・判決の労力を徒労に帰させた者に対する制裁を行うとともに、同一紛争を蒸し返して訴訟制度を濫用することによる相手方の応訴の煩わしさを防止する点にある。そうだとすれば、再訴を提起することについて、上記趣旨が妥当しない特段の事情がある場合には、再訴は禁止されるべきではない。
 したがって、「同一の訴え」とは、当事者および訴訟物が同一であることに加えて、再訴を提起する必要性ないし利益についても同一であることを要するものと解する。

3 本件再訴は、前訴と当事者がX・Yと同一であり、訴訟物も甲債権の返還請求権と同一である。
 しかし、Xが前訴を取り下げたのは、Yからの支払猶予の申出を受け入れ、裁判外の和解が成立したことによるものである。それにもかかわらず、Yは支払猶予期間経過後も履行せず、かつ和解の成立自体を争っている。かかるYの態度は、前訴取下げの前提を覆すものであり、Xにとって、改めて訴訟による紛争解決を求める必要性が生じたといえる。このような場合、Xによる再訴の提起は、紛争の蒸し返しとして訴訟制度を濫用するものとは評価できず、また、Yの応訴の負担を考慮しても、再訴を認めるべき正当な利益があるといえる。
 したがって、本件再訴は、前訴との関係で再訴を必要とする事情の同一性を欠くため、262条2項の「同一の訴え」には当たらない。

4 よって、裁判所は、本件再訴を適法なものとして扱うべきである。

以上

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