目次
【答案構成】
第1 小問(1)について
1 問題提起(Y社は名義書換未了のAを株主として扱い、株主割当てを行えるか)
2 規範定立(名義書換請求の不当拒絶)
3 当てはめ・結論
第2 小問(2)について
1 問題提起(Eは、Dの議決権行使を理由に決議取消しを請求できるか)
2(1) 論点① 問題提起
(2) 規範定立(他の株主に対する瑕疵の主張の可否)
(3) 当てはめ・小結論
3(1) 論点② 問題提起
(2) 規範定立(名義書換未了株主を株主として取扱いことの可否)
(3) 当てはめ
4 結論
第3 小問(3)について
1 問題提起(仮名Hで株主名簿に記載されているGに、決議取消しの訴えの原告適格が認められるか。)
2 規範定立(130条1項の「氏名」の意義)
3 当てはめ・結論
【参考答案】
第1 小問(1)について
1 株式譲渡は、名義書換がなければ会社に対して対抗することができない(130条1項)ところ、AはY社株式をBに譲渡した者であり、BはY社に対し株主名簿の名義書換請求(133条1項)をおこなっているものの、Y社による名義書換がなされていないことから、株主名簿上の株主はAとなっている。
そこで、AはY社に対して、株主割当てによる募集株式の割当てを受けることができるか、Y社はAを株主として扱うべきかが問題となる。
2 名義書換を会社の対抗要件とした130条1項の趣旨は、会社の便宜を図る点にあることから、会社が不当に名義書換を拒絶した場合には、会社の便宜を図る必要はない。また、名義書換を不当拒絶した会社が株主の地位を否定するのは信義則に反する。
そこで、会社による名義書換の不当拒絶が存する場合には、譲受人は、名義書換なしに自己が株主であることを会社に対抗できると解すべきである。
3 BはAから、株式譲渡により有効に株式を取得している。そして、Y社は株券発行会社であるところ、Bは、名義書換請求に際して株券を提示していることから、Bの名義書換請求は適法になされている(133条1項、同条2項、会社規則22 条2項1号)。
そのため、Y社が、Bによる名義書換請求に対して名義書換をしなかったことは、Y社の過失によるとしても名義書換の不当拒絶にあたる。そのため、Bは、名義書換なしに自己が株主であるとY社に対抗でき、Y社は、Bを株主として扱わなければならない。
よって、Y社はAを株主として扱うことはできず、Aの株式の割当請求は認められない。
第2 小問(2)について
1 本件において、株主Eは、名義書換未了株主であるDが議決権を行使したことを理由として本件株主総会決議取消しの訴え(会社法(以下法令名省略)831条1項)を提起し、争うことができるか。
具体的には、①Eは、他の株主Cに対する招集通知漏れ(299条1項)を理由に決議取消しの訴えの原告適格を有するか、②また、Y社がDの議決権行使を認めたことが、決議方法の法令(308条1項、341条)違反(831条1項1号)に当たるかが問題となる。
2(1) Eは、他の株主Cに対する招集手続きである通知漏れをを理由に本決株主総会決議取消しの訴えを提起することが認められるか。
(2) 取消訴訟は、個々の株主の利害を超えて、株主が会社に対し法令・定款を遵守した会社運営を求めることを趣旨とするものであり、条文上も「株主」と規定され、限定が付されていないことから、「株主」であれば、他の株主に対する取消事由ついても主張することができると解すべきである。
(3) よって、Y社「株主」であるEは、Cに対する招集手続の法令違反を主張し、本件決議の瑕疵を争うことができる。
3(1) Dは、CからY社株式を譲り受けた後、Y社に対する名義書換請求をしていないため、Y社に対し株主であることを対抗できない(130条1項)。そこで、Y社が名義書換未了株主であるDを株主として取扱い、議決権を行使させることは認められるか。
(2) 会社法130条1項は、会社の事務処理の便宜を図る趣旨の規定であり、対抗要件に過ぎないから、会社側がその便宜を放棄することは自由である。
したがって、会社側は、自己の危険において、名義書換未了の株主であっても、その者を株主として取扱い、権利行使を認めることができると解すべきである。
ただし、株主平等原則(109条1項)に反する恣意的取扱いは認められない。
(3) 本問において、Y社は、代表取締役PがCから株式譲渡の事実を聞いたことにより、Dが実質的な株主であることを認識していた。その上で、Y社は、会社の便宜のために株主名簿上の株主を画一的に取り扱うという利益を自ら放棄し、実質的な株主であるDを株主として扱うことを選択したといえる。
したがって、Y社がDに株主総会の招集通知を発し、その議決権行使を認めたことは適法である。
そして、Dを株主として扱った以上、株主名簿上の株主であるCを株主として扱わないことも正当化されるから、Cに対して招集通知を発しなかったことも法令違反に当たらない。
また、本問では他に名義書換未了の株主がいるといった事情はなく、Y社が恣意的にDのみを特別扱いしたとも認められないから、株主平等原則にも反しない。
4 よって、本件決議の方法には法令違反(831条1項1号)は存在せず、Eの提起した本件決議取消しの訴えは、請求棄却されるべきであって、認められない。
第3 小問(3)について
1 株主としての権利を行使するためには、原則として、その「氏名」及び住所を株主名簿に記載又は記録されなければ、会社に対して株主であることを対抗できない(130条1項)。したがって、決議取消しの訴えを提起するには、原則、株主名簿に有効な記載がされている必要があるところ、仮名Hを「氏名」として株主名簿に記載されているGに、株主総会決議取消しの訴えの原告適格が認められるか。
株主名簿に記載すべき「氏名」の意義が問題となる。
2 この点、株主名簿は株主を特定し、会社との法律関係を明確にするための公的な帳簿であることから、記載されるべき「氏名」は、原則として本名、すなわち戸籍上の氏名を指すと解する。
もっとも、例外的に、株主が自己の氏名として本名とは異なる通称を長期間にわたって一般的に使用し、その結果、社会生活上その通称が当該株主の氏名として一般的に通用していると認められるような特段の事情がある場合には、その通称も「氏名」に当たると解する。
3 本件では、GがHという仮名を長期間にわたって一般的に使用し、社会生活上、仮名HがGの氏名として一般的に通用していると認められるような特段の事情は認められない。
そのため、Gは有効な名義書換を受けたとはいえず、名義書換未了株主として扱われることになる。
よって、Gは名義書換未了株主であるから、株主総会決議取消しの訴えの原告適格を有さない。
以上

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