スポンサーリンク

参考答案 Law Practice 商法〔第5版〕 問題52 株式買取請求における公正な価格

目次

 

【参考答案】

1 Yは、X社株主として、株式交換契約の承認決議(会社法(以下法令名省略)783条1項)に反対し、株式買取請求権を行使している(785条1項)。その後、両者間の価格協議が不調となったため、裁判所に対し価格決定の申立てが行われた(786条2項)。株式買取請求権の買取価格は「公正な価格」(785 条1項)であるから、裁判所は「公正な価格」を決定しなければならないところ、どのような基準によるべきか。

2 785条の趣旨は、反対株主に対して企業価値の適正分配を受けて、会社から退出する機会を保障することにある。そこで、「公正な価格」とは、少なくとも組織再編がなかったならば有すべきであった公正な価格(ナカリセバ価格)を保障するとともに、組織再編によるシナジーを適切に分配した価格をいう。
 もっとも、支配株主による従属会社の完全子会社化を目的とする取引においては、構造的な利益相反が存在するため、恣意的な価格決定がなされるおそれがある。そこで、裁判所としては、反対株主の利益保護の観点から、①独立した第三者委員会の設置等により公正な手続が履践され、かつ、②当該組織再編が第1段階の公開買付けと一連の取引と評価でき、その価格も同等である場合には、特段の事情がない限り、当該公開買付価格と同額を「公正な価格」と解するのが相当である。

3 本件では、XがAの提案を受けてから契約締結までに約1か月の検討期間が設けられており、その間に恣意的な価格決定がなされたことや、株主への情報開示が不十分であったこと等をうかがわせる事情は見当たらない。そのため、一般に公正と認められる手続が履践されたと考えられる(要件①充足)。
 次に、AはX株式の全部取得を目的として、第1段階として公開買付けを実施し、その完了後の同年10月に第2段階として本件株式交換契約を締結していることから、これらは一連の取引と評価できる。そして、公開買付価格は1700円であり、本件株式交換比率の算定基礎とされたX株式の価格も1700円であるから、両者の価格は同等である(要件②充足)。これにより、株主に対する強圧性も排除されているといえる。
 加えて、公開買付けから株式交換契約締結までの間に、その価格決定の基礎となる事情に予期しない変動が生じたといった特段の事情も見受けられない。
 したがって、裁判所は、本件株式交換における「公正な価格」として、公開買付価格と同額の1株当たり1700円と決定すべきである。

以上

コメント