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【参考答案】
1 Aは、本件審判の手続が非公開の審問室で行われたことに対し、夫婦同居請求は本来訴訟事件であり、公開の法廷の対審裁判によらない家事事件手続法の規定および本件審判は憲法32条および82条に違反すると主張して特別抗告をしている。そこで、最高裁判所は、どのような判断をすべきか。夫婦同居を命ずる審判手続が、憲法32条および82条にいう「裁判」にあたり、公開法廷での対審・判決を要するかが問題となる。
2 憲法32条および82条が保障する公開の法廷における対審及び判決によって行われる「裁判」とは、当事者の主張する実体法上の権利義務の存否を確定する、性質上純然たる訴訟事件のみを対象とするものであり、非訟事件をも対象とする規定ではないと解する。
ここで、当該事件が純然たる訴訟事件にあたるか否かは、当事者の主張する実体法上の権利義務の存否自体を確定する性質を有するか否かによって区別すべきである。権利義務の存否の確定は司法権の本来的な作用であるのに対し、権利義務の存在を前提としつつ、裁判所が後見的な裁量によってその具体的内容を形成するような手続は、性質上の非訟事件にあたると解する。
3 では、本件審判の対象である夫婦同居請求が、純然たる訴訟事件にあたるか。この点、夫婦の具体的な同居態様の前提となる同居義務の存否自体は、実体法上の権利義務であるから純然たる訴訟事件に該当する。
一方、本件のような家事審判において行われるのは、具体的な同居の時期、場所、態様等について裁判所が裁量により後見的に決定する手続であり、これは純然たる訴訟事件ではなく非訟事件にあたる。そして、このように解したとしても、前提となる同居義務の有無について当事者は別途訴訟事件として公開の法廷で争う途が残されている。そのため、本件審判のように具体的な同居の態様について裁判所が決定を下したとしても、憲法32条および82条が保障する、公開の法廷で裁判を受ける権利については実質的な保障が図られている。
したがって、本件審判の手続を非訟事件と解し、非公開の審問で処理したとしても憲法上問題はない。
4 以上より、本件審判は憲法32条および82条における「裁判」に該当しないため、同条違反はない。したがって、Aの特別抗告の申立てには理由がなく、棄却されるべきである。
以上

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