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【参考答案】
1 既判力は、事実審の口頭弁論終結時における権利・法律関係の存否の判断に生じるところ、前訴判決の既判力は、2020年4月2日における将来給付として月額20万円の支払いを求めるXのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求権に生じている。
一方、Xの後訴請求は、前訴判決の認容額を超える増額分として月額30万円の支払いを求めるものであるが、これも同一の不法行為に基づく損害賠償請求権の一部を行使するものであるから、原則として、前訴判決の既判力によって遮断され、許されないのではないか。
2 確かに、既判力の遮断効により、同一請求権についての後訴は原則として許されない。しかし、将来給付の判決は予測に基づく特質がある以上、口頭弁論終結後の予測困難な事情変更による増額分まで遮断することは、当事者間の衡平を害する。
そこで、予測不可能な増額分については、前訴において請求から除外する趣旨が明らかであったとして、明示的一部請求と同視すべきである。したがって、増額分は前訴の審判対象に含まれず、これについての後訴は既判力に抵触しないと解する。
3 本件において、前訴の事実審口頭弁論終結日は2020年4月2日である。その後、本件土地の近郊に鉄道の駅ができるという事情変更が生じ、2022年4月1日当時における相当賃料額が月額50万円に達している。このような駅の建設やそれに伴う地価・賃料の急激な高騰といった事情は、前訴の口頭弁論終結時においては、その実現時期や影響の程度を具体的に予測して主張・立証することは極めて困難ないし不可能であったといえる。そうだとすれば、Xの前訴における請求は、このような予測不可能な事情変更に基づく増額分を含まない趣旨であったことが客観的に明らかであり、当時の予測可能な範囲に限定された明示的一部請求と同視することができる。
したがって、本件後訴における月額30万円分の差額請求は、前訴の訴訟物とは異なる残部請求にあたるため、前訴既判力には抵触しない。
4 よって、本件後訴は適法である。
以上

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