参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題63 固有必要的共同訴訟の成否(1):第三者から共同所有者に対する訴え

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【参考答案】

1 本件において、Y₂ないしY₄に対する訴訟が、相続人全員を被告とする必要のある固有必要的共同訴訟(民事訴訟法(以下法令名省略)40条1項)に当たるのであれば、共同相続人の一人であるY₅が欠落している以上、当事者適格を欠き不適法となる。その場合、瑕疵を治癒するために弁論を再開し、Y₅を当事者として関与させる必要がある。
 他方、通常共同訴訟(38条)であれば、Y₅が関与していなくとも、Y₂らとの関係で審理が尽くされている以上、判決を下すことができる。そこで、土地所有者が、建物を共同相続した者らに対して提起する建物収去土地明渡請求訴訟が、固有必要的共同訴訟に当たるかが問題となる。

2 民事訴訟は実体法上の権利関係を実現・処分する過程であるから、固有必要的共同訴訟に当たるか否かは、第一次的には、訴訟の目的たる権利関係の管理処分権が実体法上共同的に帰属しているか否かによって決すべきである。もっとも、当事者適格は訴訟追行権に関わる問題でもあるから、訴訟政策的観点による調整も要する。
 そこで、固有必要的共同訴訟に当たるか否かは、実体法上の管理処分権の帰属態様を基準としつつ、紛争解決の実効性や当事者の公平といった訴訟政策的観点も加味して判断すべきである。

 3(1) 実体法上の観点からすると、他人の土地上に建物を所有してその土地を不法占拠する者が死亡し、その相続人が数人ある場合、その建物収去義務は性質上不可分債務となる。そうであれば、各共同相続人は、その相続分に応じた義務を承継するのではなく、各自がその義務全部について履行の責任を負うものと解される(民法430条、436条、432条参照)。したがって、実体法上、当該義務の管理処分権が共同相続人全員に合一的に帰属しているとはいえず、債権者である土地所有者は、共同相続人の一人に対しても、その全員に対しても、選択して履行を請求することができることになる。

  (2) 訴訟政策的観点からは、相続人の一人が行方不明である場合や、相続関係が複雑で全員を特定することが困難な場合に、全員を被告としなければ不適法となるとすれば、土地所有者の権利行使を著しく困難にし、公平を欠くことになる。
 他方、通常共同訴訟であると解したとしても、被告とされた共同相続人は自己の権限の範囲等で防御を尽くすことができるから、他の共同相続人が訴訟に関与しないことによって直ちに自己の手続保障が害されるわけではない。

  (3) 以上より、本件訴訟は固有必要的共同訴訟ではなく、通常共同訴訟であると解するのが相当である。

4 よって、本件訴訟においてY₅が当事者となっていなくとも、Y₂らに対する訴えは適法である。したがって、控訴審裁判所は、Y₅のために弁論を再開する必要はなく、Y₂らに対する判決を下すことができる。

以上

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