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【参考答案】
第1 土砂の除去および流出防止措置について
1(1) AはBに対し、所有権(民法(以下法令名省略)206条)に基づく妨害排除請求権として乙地の土砂の除去および妨害予防請求権として流出防止策を施すことを請求すると考える。
(2) 妨害排除請求権の要件は、①請求対象目的物につき所有権を有していること、②目的物所有権が占有侵奪以外の方法で侵害されていることである。
また、妨害予防請求権の要件は、(ⅰ)請求対象目的物につき所有権を有していること、(ⅱ)相手方の妨害のおそれがあることである。
(3) 本件において、Aは乙地を所有している(要件①、(ⅰ)充足)。また、現在、Bが所有する丙地から崩落した土砂が乙地上に存在し、Aの自動車の入出庫が不能となっていることから、Aの所有権行使が妨害されているといえる(要件②充足)。さらに、梅雨の時期を迎え、丙地に放置された土砂の山が崩落して乙地に流入する客観的な蓋然性が高く、妨害のおそれも認められる(要件(ⅱ)充足)。
(4) もっとも、本件の土砂崩れは、請負人C社の工事に起因するものであり、B自身の行為によるものでない。そこで、このような場合でも、Bに対して、その費用負担による除去等を請求できるかが問題となる。
2 物権的請求権は、所有権の円満な支配状態を回復するための権利であり、相手方の故意・過失を要件としない。そして、侵害状態が相手方の所有物に起因する場合、その物の所有権者は、当該物を管理・処分する権限を有している以上、自らの責任および費用においてその侵害を除去すべき義務を負うと解するのが相当である。
3 本件において、妨害源となっている土砂はBの所有物であり、Bの支配下にある丙地から流出したものである。C社が倒産し、事実上の管理能力を喪失している現状においては、所有者であるBこそが妨害排除および予防措置を講じ得る地位にある。
したがって、Bの故意・過失の有無にかかわらず、Bが請求の相手方となり、その費用もBが負担すべきである。
4 よって、Aの土砂の除去および流出防止措置についての請求は認められる。
第2 樫木の枝の剪定費用の返還請求について
1(1) AはBに対し、事務管理に基づく費用償還請求権(702条1項)を行使し、造園業者に支払った剪定費用の支払いを求めることが考えられる。
(2) その要件は、①他人の事務であること、②他人のためにする意思があること、③他人の事務を管理する義務がないこと、④本人の意思または利益に反することが明確でないこと、⑤本人のために有益な費用を支出したことである。
2(1) 土地の所有者は、その土地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その枝を切除する義務を負う(233条1項)。したがって、越境した枝の切除は、本来Bが自らの責任において行うべきBの事務である。また、AB間には委任契約等はなく、Aにはこれを管理する法的義務はない。
もっとも、他人の事務であっても、権限なく干渉することは違法となる可能性があるが、本件においてAはBに対し枝の切除を催告し、相当の期間が経過している。これにより、Aには233条3項に基づく枝の切除権が発生している。
以上より、Aによる切除行為は正当行為として適法であり、Aは「義務なくして他人の事務」を管理したといえる(要件①、③充足)。
(2) Aは、自己の敷地の利用円滑化という動機を有しているものの、同時にBが負うべき公法上・私法上の義務を代行するという意思も有しているといえるため、「他人のためにする意思」も認められる(要件②充足)。
(3) BはAからの剪定要求を拒絶していた事実がある。しかし、越境状態の放置はAの所有権侵害行為であり、これを解消することはBにとって客観的な利益となる。また、違法状態の継続を望む意思は法的に保護に値しないため、適法状態に回復させる本件管理は、Bの意思にも反しないと解すべきである(要件④充足)。
(4) Aは、本来Bが負担すべき剪定作業のために造園業者に費用を支払っていることから、これはBのために支出した「有益な費用」に当たる(要件⑤充足)。
3 以上より、事務管理に基づく費用償還請求権の要件はすべて満たされるため、AはBに対し、造園業者に支払った費用の償還を請求することができる。
以上

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