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参考答案 Law Practice 民事訴訟法〔第5版〕 問題30 間接事実の自白

目次

 

【参考答案】

1 Xの500万円の貸金返還請求に対し、Yは抗弁として、XからAへの本件債権の譲渡を主張している。Xは、第1審において本件家屋買受けの事実を自白しているところ、控訴審において当該自白と異なる売渡担保の事実を主張している。証拠調べの結果、売渡担保の事実が認められる場合、裁判所は、Xの上記自白に拘束されず、自白と異なる事実認定をすることができるか。本件家屋買受けの事実について裁判上の自白(民事訴訟法(以下法令名省略)179条)が成立するかが問題となる。

 2(1) 裁判上の自白とは、当事者が、訴訟の口頭弁論又は弁論準備手続においてする、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実の陳述をいう。

  (2) 本件において、Xは第1審の口頭弁論期日において、本件家屋買受けの事実を認める陳述をしている。当該事実は、Yの主張と一致しており、Yの抗弁事実である債権譲渡を推認させる事実であることから、Xにとって敗訴につながる不利益な事実といえる。
 したがって、Xの陳述は、形式的には裁判上の自白に当たる。

  (3) もっとも、本件家屋買受けの事実は、主要事実である債権譲渡の事実を推認させる間接事実にすぎない。そこで、間接事実についても自白の拘束力が認められるかが問題となる。

 3(1) 弁論主義の第2テーゼに由来する自白の拘束力は、法律効果の発生・変更・消滅を直接基礎づける事実、すなわち主要事実にのみ適用され、間接事実には及ばないと解すべきである。
 なぜなら、主要事実の存否の判断において、間接事実は主要事実の推認に役立つ事実として証拠と同じ役割を果たすにすぎない。にもかかわらず、自白された間接事実について当然に存在するものと前提して主要事実の存否を認定することを裁判官に強いると、他の証拠から別の心証が得られた場合に、裁判官が不自然・不合理な事実認定を強要されることとなり、自由心証主義(247条)に抵触するからである。
 したがって、間接事実について裁判上の自白は成立せず、裁判所は当事者の自白に拘束されることなく、証拠調べの結果に基づき自由な心証によって事実を認定することができる。

  (2) 本件において、Yの抗弁は債権譲渡による代物弁済であり、その法律効果の発生を直接基礎づける主要事実は、XからAへの債権譲渡の事実である。
 これに対し、Xが自白した本件家屋買受けの事実は、Xに家屋代金支払債務が発生したことを示し、「その代金支払に代えて本件債権を譲渡したのではないか」という主要事実の存否を推認させる機能を有するにすぎない。したがって、本件家屋買受けの事実は、主要事実ではなく間接事実に当たる。
 そうだとすれば、間接事実については自白の拘束力は生じないから、Xの当該陳述に裁判上の自白は成立しない。
 したがって、裁判所はXの陳述に拘束されることなく、証拠調べの結果判明した売渡担保の事実を認定し、これと矛盾する家屋買受け及び債権譲渡の事実を否定することが許される。

4 よって、裁判所は、Xの自白に拘束されず、自白と異なる事実認定をすることができる。

以上

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