参考答案 Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第5版〕 問題21 表見代理:110条+112条2項

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【参考答案】

 1(1) XはYに対し、所有権に基づく妨害排除請求権としての甲土地所有権移転登記の抹消登記請求をすると考える。

  (2) その要件は、①土地所有権を有していること、②当該土地上に他人名義の登記が存在することである。

  (3) 本件では、少なくとも2024年9月14日以前において、Xは甲土地所有権を有していた(要件①充足)。また、2024年9月24日、Y名義所有権移転登記がなされている(要件②充足)。
 したがって、Xの請求原因事実は認められる。

 2(1) これに対し、Yは、Xの代理人Cとの間で甲土地の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し、甲土地の所有権を取得したと主張して、所有権喪失の抗弁を主張すると考える。

  (2) その要件は、(ⅰ)代理人と相手方との間の法律行為、(ⅱ)顕名、(ⅲ)(ⅰ)に先立つ代理権授与(99条1項)である。

  (3) 本件では、X代理人CとYとの間で本件売買契約が締結されており(要件(ⅰ)充足)、その際、売主をXとする契約書を作成していることから、Xのためにすることを示したといえる(要件(ⅱ)充足)。
 しかし、XはCに対し、D公庫からの融資手続に関する代理権を与えたにすぎず、売買契約の代理権を授与していない(要件(ⅲ)不充足)。
 したがって、本件売買契約は無権代理行為であり、その効果は本人Xに帰属しないのが原則である(113条1項)。

 3(1) そこで、Yは、権限外の行為の表見代理(110条)が成立し、本件売買契約の効果がXに帰属すると主張すると考える。

  (2) その要件は、2(2)の(ⅲ)に代えて、(a)基本代理権の存在、(b)権限外の行為、(c)代理人の存在を信じたことについての「正当な理由」である(110条)。

  (3) 本件において、XはCに対し、甲土地を担保にD公庫から融資を受けるための代理権を授与している。この代理権は、金銭消費貸借契約および抵当権設定契約という私法上の法律行為に関するものであるから、基本代理権(要件(a)充足)に当たる。
 また、Cは当該代理権の範囲を超えて、Yとの間で本件売買契約を締結しているため、権限外の行為(要件(b)充足)に当たる。
 では、YがCに売買の代理権があると信じたことに「正当な理由」があるか。

   (4)ア 表見代理制度の趣旨は、本人の犠牲の下、取引安全の保護を図る点にあることから、「正当な理由」とは、第三者が代理権の存在を信じ、そのように信じたことについて過失がないこと(善意・無過失)をいうと解する。

    イ YはCに代理権があると信じていたといえるから、善意である。
 しかし、Yは不動産業者であり、一般人よりも高度な注意義務が課される立場にある。また、本件取引は、Eから「B社社長Cから従業員に金を必要とする者がいて」として持ち込まれた話であり、他人の債務のために自己の不動産を提供するという異例な経緯を含んでいる。それにもかかわらず、Yは、Cが所持していた実印や書類のみを信じ、X本人への意思確認といった容易になしうる調査確認を行っていない。
 このような事情に鑑みれば、YがCに代理権があると信じたことには過失があり、「正当な理由」があるとはいえない。

4 以上より、民法110条の表見代理は成立しない。
 したがって、本件売買契約の効果はXに帰属せず、Xは甲土地の所有権を喪失していないといえるから、Xの請求は認められる。

以上

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