スポンサーリンク

参考答案 Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第5版〕 問題22 無権代理と相続

目次

 

【参考答案】

第1 小問(1)について

 1(1) Xは、Aに対し、売買契約(民法(以下法令名省略)555条)に基づく甲土地所有権移転登記請求をすると考えられる。

  (2) その要件は、①財産権移転と代金支払いの合意、②代理人と相手方の法律行為、③代理人による顕名、④②に先立つ代理権の授与(99条1項)である。

  (3) 本件では、CとXとの間で、甲土地の移転とその売買代金を1000万円とする旨の合意が成立している(要件①)。また、CはAの代理人と称して、委任状等を提示して、Xと①の売買契約を締結しているから、要件②と③を充足する。
 しかし、AはCに代理権の授与をしていない。そのため、CによるXとの本件売買契約締結は、無権代理(113条1項)となる。
 したがって、本件売買契約の効力はAに帰属せず、XのAに対する請求は認められないのが原則である。

 2(1) もっとも、無権代理人Cは死亡し、その直系尊属である本人AがCを単独で相続している(889条1項1号)。Aは相続放棄も限定承認もしていないため、単純承認したものとみなされ(921条2号)、Cの有していた権利義務を包括承継する(896条本文)。
 これにより、Aは、元々有していた本人としての地位に加え、Cの無権代理人としての地位を相続することになる。そこで、Aが「本人」としての地位に基づいて追認を拒絶することが、相続によって承継した「無権代理人」としての地位との関係で許されないとして、追認が強制され、有権代理としてAに効力が帰属することにならないか。

  (2) この点、地位の融合を認めると、帰責性のない本人が追認拒絶権を失うことになり酷である。また、相続という偶然の事情で相手方を利する結果となるのは妥当でない。
 したがって、相続によって法的地位は融合せず、併存すると解するのが相当である。

  (3) 本問において、AはXの申入れを拒絶している。これは、併存する本人としての地位に基づいて、Cの無権代理行為の追認を拒絶したといえる。
 したがって、本件売買契約の効果はAに帰属しない。

 3(1) そこで、XはAに対して、相続した無権代理人の責任(117条1項)である履行請求権として、甲土地所有権移転登記請求をすることが考えられる。

  (2) この点、仮に117条に基づく履行請求を認めると、Aは追認を拒絶したにもかかわらず、事実上、契約の履行を強制されることになる。そうすると、資格併存説により、Aに本人として追認拒絶を認め、契約の拘束から解放した意義が没却されることになる。
 したがって、履行責任は負わないと解すべきである。

  (3) AはCの相続により、無権代理の責任を負うが、履行責任は負わないため、Xによる甲土地所有権移転登記請求は認められない。

4 以上より、XのAに対する甲土地所有権移転登記手続請求は認められない。

第2 小問(2)について

 1(1) Xは、Bに対し、本件売買契約(555条)に基づく甲土地所有権移転登記請求をすると考えられる。
 Cの本件売買契約締結行為が無権代理(113条1項)に当たり、原則として本人Aに効力を生じないことは小問(1)と同様である。

  (2) 本問では、本人Aが死亡し、子である無権代理人CとBがAを共同相続している(887条1項、896条本文)。これにより、Aが有していた本人としての地位は、共同相続人であるBとCに承継されることになる。
 そこで、本人の地位を共同相続したBとCは、承継した追認権・追認拒絶権をいかに行使することになるか。特に、共同相続人の一方が無権代理行為の当事者であるCであり、他方がその行為に一切関与していないBであるという、法律上の地位が異なる者同士で共同相続した場合、これをどのように考えるべきかが問題となる。

 2(1) 第1-2(2)の通り、相続により本人と無権代理人との地位が同一人に帰属した場合であっても、両者の地位は併存する。
 もっとも、無権代理行為を行った者が本人の地位において追認拒絶することは、先行する無権代理行為と相容れず、信義則上許されないと解する。

  (2) そして、本人が有していた追認権(113条)は、その性質上、共同相続人に不可分的に帰属する(898条、264条、251条1項)と解される。
 したがって、無権代理行為は相続によって当然に有効となるものではなく、無権代理行為に一切関与していない他の共同相続人は、追認拒絶が可能である。
 そして、他の共同相続人が追認を拒絶した場合、その効力は無権代理行為全体に及ぶと解する。

3 本問において、Bは、Xの裁判外での申入れを拒絶している。Bは、本件無権代理行為に一切関与していないから、この追認拒絶は有効である。これにより、本件売買契約は、Aの相続人であるB・C全体に対して効力を生じないこととなる。
 したがって、Bは本件売買契約に基づく甲土地所有権移転登記義務を負わない。

4 よって、XのBに対する甲土地所有権移転登記手続請求は認められない。

以上

コメント