参考答案 Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第5版〕 問題15 代理

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【参考答案】

1 AはCに対し、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法(以下法令名省略)709条)として、100万円の損害賠償請求すると考える。
 これに対し、CはBC間締結の運送契約に定められた責任制限特約に基づき、賠償責任は30万円を限度とするとの反論をすることが考えられる。
 もっとも、本来、契約の効力は当事者間のみに及び、第三者を拘束しないのが原則である。そのため、AがBに運送を委託し、Bが自己の名でCと契約した間接代理の本件において、契約当事者でないAに本件特約の効力が及ばないのではないかが問題となる。

2 宅配便は、定型的処理によって大量の荷物を迅速・安価に運送するサービスであり、その運賃が低廉であることは、責任限度額の設定により、運送人の賠償リスクが限定されていることと対価関係にある。このような宅配便システムの特質や約款の趣旨に照らせば、荷送人だけでなく、契約当事者以外の者であっても、安価な運賃という利益を享受しながら、事故等の場合だけ責任制限の拘束力を否定して高額な賠償を求めることは、利益と負担の均衡を欠き、不当である。
 したがって、契約外の第三者であっても、あえて責任制限付きの宅配便により運送することを容認していた等の事情が存するときは、信義則(1条2項)上、当該第三者は責任限度額を超えて運送人に対し損害賠償を請求することはできないと解する。

3 本件において、Aは、Bが比較的安価な宅配便サービスを利用することでコスト削減を図っていることを認識し、30万円以上の商品を発送する際にもこれを利用することを黙認していた。つまり、Aは、責任制限のリスクを受け入れた上で、低廉な運送賃によるコスト削減という利益を享受していたといえる。
 今回の100万円相当の腕時計の発送にあたっても、Aはこの運用を前提にBに指示をしており、Cの宅配便が利用されたことはAの包括的な同意の範囲内にある。 

4 したがって、AがCに対して30万円を超える損害賠償を請求することは、信義則に反し許されない。
 よって、CはAからの請求に対し、本件責任制限特約を主張し、賠償額を30万円までとする反論をすることができる。

以上

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