目次
【答案構成】
第1 小問(1)について
1 問題提起(手続違反のある自己株式取得の効力)
2 規範定立(手続違反のある自己株式取得の効力、善意の相手方との関係、無効主張権者)
3(1) 当てはめ(本件自己株式取得の手続違反の指摘)
(2) 当てはめ(相手方X社の悪意認定)
(3) 当てはめ(Y社=無効主張権者であることの確認)
4 結論
第2 小問(2)について
1 問題提起(X社は、Y社に対し本件自己株式取得の無効を主張できるか)
2 規範定立(第1-2の引用)
3 当てはめ・結論
【参考答案】
第1 小問(1)について
1 Y社は、X社という特定の「株主」との「合意」により、自己株式を「有償で取得」している。この場合、株主総会特別決議によって、取得する株式の数、株式取得と引換えに交付する金銭等の内容及びその総額、株式を取得することができる期間等を定めなければならない(156条1項各号、160条1項、309条2項2号)。これに加えて、他の株主に売却の機会を与える趣旨から、原則、他の株主に売主追加請求権を行使できる旨等を通知する必要がある(160条2項、3項、会社法施行規則28条)。
にも関わらず、本件では、取締役会決議を行ったにとどまり、株主総会特別決議及び他の株主に対する売主追加請求権の通知(160条2項)をしていないという手続違反がある。
そこで、手続違反のある自己株式取得の効力はどうなるかが問題となる。
2 法が自己株式取得規制を課した趣旨は、会社財産の不当流出を防止することで、会社、会社債権者、株主の利益を保護すること及び株主間の公平を図る点にある。
したがって、手続違反がある自己株式の取得は,原則として無効と解される。
もっとも、手続規制違反は会社の内部的意思決定の瑕疵であり、常に無効とすると、取引安全を害するから、善意の相手方との関係では有効と解すべきである。
また、上記自己株式取得規制の趣旨から、その利益を受ける立場である会社のみが自己株式の取得の無効を主張できると解すべきである。
3(1) Y社は取締役会決議のみで自己株式取得を行っており、株主総会特別決議を欠いているだけでなく、他の株主に対する売主追加請求権の通知もしていない。したがって、本件自己株式取得には重大な手続違反がある。
(2) 本件で株式を譲渡したX社は、Y社筆頭株主であり、自らの要望によってY社に株式を買い取ってもらっている。このような事情からすると、X社は、Y社の内部手続である株主総会決議を経ていないことにつき悪意であったといえる。
したがって、X社は悪意の相手方であるから、原則通り、本件自己株式取得は無効となる。
(3) そして、その無効を主張しているのは会社であるY社自身であるから、無効を主張することができる。
4 以上より、Y社は、X社に対し、本件自己株式取得の無効を主張することができる。
第2 小問(2)について
1 上場会社が市場取引等によって自己株式を取得する場合、定款に定めがあれば取締役会決議によって行うことができる(165条2項)。しかし、Y社にはそのような定款の定めがないため、原則どおり株主総会決議が必要となる(156条1項)。
にも関わらず、取引所を通してX社の保有する自己株式を取得しているから、本件自己株式取得には手続違反が認められる。
そこで、譲渡人であるX社は、Y社に対し、本件自己株式取得の無効を主張して、株式の引渡請求することができるか。
2 自己株式取得手続違反の効力とその無効の主張権者は第1-2の通りである。
3 本件で自己株式取得の無効を主張しているのは、X社であり、自己株式を取得した会社自身ではない。そのため、X社はY社に対して本件自己株式取得の無効を主張できない以上、XのY社に対する株式引渡請求は認められない。
以上

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